fireplace-柊様へ

「スギー、飯食いにいこう」
「あぁごめんクロ。ちょっと今日は行けないんだ。」

「飯いこうぜ、スギ」
「あー、うん、ごめん、今日も無理なんだ。」

「スギ、今日こそ飯行けるか?」
「うーん、ごめん。…しばらく行けないかも。」


――――雨のち、晴れ


最近、スギが俺を避けるようになった気がする。
一体なんでそうなったのか、全く心当たりがない。
……なんでだ?
もしかしたら気のせいなのかもしれない、そう思ってみたけど、でもやっぱりおかしい。
俺が言う日全部駄目っていったかと思ったら、まさかの今後しばらく駄目、だなんて。
やっぱり俺嫌われたのかな、なんて、……嫌でも不安になるよ。
そんなことを悶々と考えていたら、

「どうした?やけに大人しいな。」

ドリさんに、声をかけられた。

「え、いや、なんもないッ」
「嘘はよくないぞ。」

どうやらそんなわかりやすいくらいに顔に出ていたらしく。
俺は、チラッとドリさんに話してみよう、と思った。

「杉江のことか。」

話す前にわかられてた……。

「…最近飯に誘っても来てくんないんスよね。」
「ふむ。みんな同じようなことをいっているみたいだが……」
「え、みんな?」
「あぁ。誰の誘いでも断っているらしい。」

みんななにかおかしいとは思っているみたいだが。
そう言って、ドリさんがため息をつく。

「黒田でもそうなら、ほんとに本人に話をしてみるしかないのか……」
「……ありがとうございますっ」

ドリさんの手を煩わせることはない。俺が理由を聞く。
……誰よりも先に、俺が理由を知りたいんだ。
クソッ、スギはどこだ。もう帰っちまったか?
玄関まで急ぐと、そこには壁に寄りかかって携帯をいじるスギがいた。

「ス……ッ」

ヴーヴーヴー
ポケットで携帯がなる。
ディスプレイには、杉江、の文字。
携帯を開いて、電源ボタンを押す。

「あ、クロ、ちょうどよかった」
「は?」
「今から飯食いにいこう」
「……は?」

今こいつはなんと言ったか。
散々人の誘いを断っておいて、飯食いにいこう、だぁ?

「いやだ、っていったら?」
「今までのこと、ちゃんと説明するからさ」
「……」

正直、腹立つから断ってやろうかと思った。
でも、説明するなら……聞きたい、とも思う。

「……しゃーねーな」
「ふ、そういうと思った」




雨降りの中、スギの車でつれてこられたのはしゃれた感じの店の、個室。
好きなもの頼みなよ、なんて言われて試しに頼むととても旨くて。
俺は当初の目的なんか忘れて、食事に夢中になった。

しばらくして料理が一段落した頃、スギがひとつ咳払いをした。

「クロ」
「ん?」
「これ、」
「……?」

スギがおもむろに差し出したのは、小さな箱。
スギの視線がが開けろと言う。
恐る恐る開けてみると、ミサンガが1つ、入っていた。

「……スギ、」
「今日がなんの日か、わかる?」

今日がなんの日か……?

「ごめん。しばらく一緒にいられなかったのは、それを探してたんだ。」

なかなかいいものが見つからなくて。
ネックレスも考えたしストラップも考えた。
でもやっぱり、ソレだといつも身に付けていてもらえるし。
だからソレにしたんだ。
スギは俺を真っ直ぐに見たまま、そんなことを言う。

「……まさか、なんの日か覚えてないとか言わないよね?」
「う……その……」

はぁ、と呆れたようにため息をついて、スギが席をたつ。
そして俺の隣の席に片膝をつき、体を屈めた。

「ス」

名前を呼ぶ暇も与えられない。
降ってくる長い長いキス。
体を押しても離れてくれない、強い力で抱きすくめられる。

「い、痛いって!馬鹿!」
「クロ、思い出してくれた?」

腕の力を少しゆるめて、スギが聞く。
なんだか照れくさくて、俺は顔を背けた。
窓からは満月が、覗いている。

「……あぁ、思い出したよ」

今日は大切な、記念日、だもんな。




―――――――――――――――

おまたせしてほんとすんません!!ぎゃぁぁぁぁ!!←
そして、変なもんかいてごめんね!
スギさんは記念日とか覚えるの得意そうだなあ、クロは忘れそうだなぁ、という勝手な妄想から生まれました。
いや、案外逆だったりして……?笑
まあ、そんな感じです。
こんなんでよければもらってやってくだせぇ!!
煮るなり焼くなりどうぞ!!
では、書かせてくださってありがとうございました!

[mokuji]



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