親ばか

「兄貴ー!」

「ん、どうしたのリベザ」

ル、と続くのを待たずにリベザルは座木にぎゅうっと抱きついた。
殆ど突進に近い抱きつき方だったので、少しだけ座木の体がよろめく。

「やっぱり!」

リベザルは座木の腰に手を回したまま、顔を埋めて嬉しそう言った。

「やっぱりって何が?」

「洗濯物を取り込んでる時に気づいたんです。畳んで置いてある時と、着ている時では少しだけ匂いが違うって!」

腰に手を回したまま顔だけを上に向けて、ぬいぐるみ状態の座木に説明をした。
すん、と匂いを嗅ぐと洗濯物を取り込んだ時に香った柔軟剤とはまた違う、優しい匂いがする。これは嗅ぎ慣れた座木の匂いだ。

「へえ、すごいね。気がつかなかった」

「えへへ、兄貴のからはすごく優しくて安心する匂いがします!」

「ありがとう。リベザルからはお日様の匂いがするね」

リベザルに顔を寄せて匂いを嗅ぎ、優しく笑う座木に嬉しくなったリベザルはさらにぎゅーっと抱きついた。



「ってことがあったんだけど、あいつら可愛すぎない?」

零一の前に置いてある麦茶を一息で飲み干すと秋は同意を求めるように、零一の前に空になったグラスを置いた。

「お前…毎回何かしらあったらうちに来て自慢するのいい加減やめろ」

空になったグラスに麦茶を注ぎ一口飲んだ。冷えた麦茶が喉を通り、体が冷やされていくのがわかった。
ついでにこいつの頭も冷やしてくれないか、など少ししか思っていない。

「でさ、リベザルが……」

「まだあるのか!」

いつ終わるのかわからない秋の無自覚な自慢話に付き合わされる事に、不本意にも慣れしまった零一は半ば諦めるように残りの麦茶を飲み干した。


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