リベザルと秋さん
「はーい、没収」
賭けの代償として、今まさに秋の手によって奪われようとしている座木特製のケーキに、リベザルは名残惜しげな視線を注いだ。
「ひ、一口だけでも……」
せめて一口。そう思いを込めて縋るように秋の目を見る。
期待したものとは全く違う、冷めた視線がリベザルを見返す。
「賭けに負けたお前が悪い」
きっぱりと言われる正論に返す言葉もない。ケーキを賭けた秋との勝負にリベザルは負けたのだ。
「まあ、勝者の情けとして、再戦を受けてやらんでもない」
「そ、それって……」
リベザルの目の前に、一筋の光が差す。
「欲しかったら奪い返してみな。その代わり手は抜かないからな」
全く負けるつもりがないのだろう、秋には余裕の笑みが浮かんでいる。
「お、俺だって負けません!」
打倒、秋。
何度目かの誓いを立てて、リベザルは拳を掲げた。
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