リベザルとイエンリィ

飛ばされる。
そう思った時にはすでにシーツは風にさらわれ、物干し竿からふわりと浮いていた。
掴もうと咄嗟に伸ばしたイエンリィの指は、あと少しのところでシーツに届かない。

「……」

風の流れに乗りふわふわと飛ばされていくシーツを追いかけようと、足を早めたイエンリィの横から、小さな影が通りすぎた。

その影が、飛び回るシーツの前に立ちはだかる。

「と、止まってくださ――ぎゃっ……!」

勢いよくシーツを顔面で受け止めたリベザルは、少し苦しそうにもがくとひょこりとその赤い頭を真っ白なシーツから覗かせた。

「ぷはっ……シーツ捕まえました!」

そう言って笑うリベザルには、シーツは大きすぎたらしい。大きなシーツを羽織り、地面に着かないように、小さな体を目一杯広げた姿はまるでシーツのお化けのようだ。

「……」
「イエンリィさ――…わっ」

よくできました、とでも言うように無言で頭を撫でるイエンリィの手は、草木を扱う様に優しく、そして暖かい。

「えへへ……」

薄っすらと微笑みを見せるイエンリィに、リベザルは少し照れ臭そうに顔を綻ばせた。



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