親ばか3

「兄貴、寒くないですか?」

「リベザルの手が暖かいから大丈夫だよ。リベザルは寒くない?」

「はい、全然寒くないです!」

リベザルが座木の手をぎゅっと握った。
いつもの大きな手のひらと長い指とは違い、今はリベザルの手のひらに収まる程小さく、そしてぷにぷにと柔らかい。

「秋の薬の効果が早く切れたらいいのだけど……」

口車に乗せられ秋の作った薬を飲んでしまった座木は小さな子供の姿になっていた。
背はリベザルより低く、声は普段の座木より高い。
買い物に行くためにリベザルの服を借りたが上も下も一回りほどサイズが大きく、だぼついた服がより座木を小さく見せていた。

「まったく、秋には困ったものだね」

言葉で言うほど困った素振りを見せない座木を、リベザルが心配そうに見つめ何かを言いたそうにもじもじとしている。

「リベザル、どうかした?」

「兄貴はその姿嫌ですよね……」

「え……?」

毛糸のマフラーに顔を埋めているせいでリベザルの声が聞こえにくい。
座木は俯くリベザルの正面に立ち、覗き込んだ。普段は見上げられるリベザルの視線が上にあるため、自然と上目使いになる。

「その……俺が兄貴より背が大きくなるのって絶対ないから、もう少しこのまま、なんて」

だんだん声が小さくなるリベザルの耳が赤い。そんなリベザルの姿を見た座木の顔に思わず笑顔が溢れた。

「ふふ、じゃあ今日はリベザルが『兄貴』かな?」

「へっ……!?そ、そんな滅相もない!兄貴は兄貴です!」

珍しくからかうような口調の座木に、真っ赤な顔を左右に振りリベザルが慌てて否定する。
振りすぎてくらくらする視界の端で座木はいつもと変わらない優しい顔で笑っていた。

「今日は買うものが少ないからはないから帰りに公園で遊ぼうか?」

座木からの優しい誘いにリベザルは首が取れそうなほど力強く頷いた。

「俺、荷物持ち頑張ります!」

「ありがとう、頼りにしてるよ」

元気に歩き出した小さな弟分の暖かい手を座木はぎゅっと握り返した。







「おい、いい加減にしないとバレるぞ」

「隠れたら見えないじゃない」

「お前なあ……」

尾行と言うものがわかっていてそれなのか、買い物を見守るために後をつけると喚く秋に無理矢理連れ出された哀れな零一は、寒空の下で子供二人の後を追う秋の姿にとあるテレビ番組を思い出していた。

「はじめてのお使いかよ……」




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