座木さんと葉山くん

秋の悪戯で座木と葉山の体が入れ替わってしまった。

「ふわー、目の前に俺がいる」

鏡ではなく、立体として存在する自分の体を葉山は珍しそうにペタペタと触っている。

「あの……御さん?」
「あっ、こんなところに黒子が……むむ!意外に俺って筋肉あるんですねー」

葉山は座木の言葉が耳に届いていないのか、いつの間にか脱がされたワイシャツは、何処かへいってしまい座木(見た目は葉山)は露になった背中を好きに触られていた。

「えーっと、ひとーつ」
「ひゃうっ」

外気に晒され、寒さにうっすらと鳥肌が立つ腕を擦っていると葉山の指が背中の一点をぎゅっと押さえた。

「え、座木さん?」
「な、なんでもないです」

自分から漏れた甲高い声に、咄嗟に口を手で塞いだ座木は不思議そうに見つめる葉山から目を逸らした。

「ふたーつ」
「んんっ……」

見た目は座木の姿をしている葉山が、楽しそうに自分の背中の黒子を数えている。
黒子と黒子を繋ぐように指でなぞる触り方がこそばゆく、葉山が5つめを数えた辺りで座木は降参の声をあげた。

「お、御さん…くすぐったいので、もう……」
「え、俺そんなにくすぐったがりじゃないのになあ……。あ!じゃあ、ここも駄目ですか?」
「ひぅっ、や……やめ……あっ」

突然脇腹をくすぐられた座木の体から力が抜け、口を塞いでいた手がだらりと下がる。
口から漏れる甘い声を唇を噛み締めて圧し殺しぐったりと机にもたれる座木の顔が色っぽい。

(ふわああ〜!俺の顔なのに違うみたい!なんかドキドキしてきた……って、あ、あれ?)

葉山は体の違和感に気付き、目線を下に向けた。
ピシッと音を立てて葉山の体が固まる。

「……あ、あの〜」

申し訳なさそうに、葉山が手を挙げる。
座木は先程の余韻のせいか、目には涙の膜が張り頬は赤く染まっている。

「なん、ですか御さん」
「あの……生理的な問題というか、その……」

股間を押さえ前屈みで情けなく笑う葉山の姿に、座木は嫌な予感がした。

「勃っちゃい……ました」

えへへ、と笑う自分の顔に座木はくらりと目眩がした。

「……仮にもこれは葉山さんの体ですよ?それなのに……」
「体は俺でも中身が座木さんだと思うと可愛く見えちゃって……あ!も、もしかして俺ってナルシスト!?」

やっとの思いで絞りだした抵抗も葉山の斜め上な発想の前ではないに等しい。
頭を抱え、嫌だー!と嘆く姿は座木の姿をしているはずなのに葉山に見えるから不思議だ。

「どう……しましょう?」
「どうって……」

眉を下げ困ったよう笑う葉山の顔から視線を下に落とし、座木はズボンを押し上げテントを作っている股間に目を向けた。
自分の体を好きに触られるのは嫌だ、しかしこのまま放っておくのはあまりにも酷だ。

「……私がやりますから、御さんは目を瞑っていてください」

座木は覚悟を決め、見た目は自分の体である葉山のズボンに手をかけた。
緊張で手が震える。

「あ、でもこれだと俺の手が座木さんの自慰を手伝ったことになりますね!」
「……いい加減静かにしてください」

目を瞑っている葉山からの空気の読めない発言は、座木の頭をさらに痛ませた。


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