座木さんと秋さん

遠くで規則的な電子音が聞こえる。
座木がぼんやりとする頭で音の出所を手探りで探すと、音の発生源はすぐ真上にあり、少し腕を伸ばしただけで簡単に手に当たった。

ピッ、と余韻を残して音が消えると座木は再びに潜り、程よく暖まった布団に身を委ねる。

(少し重みがあると安心するのは何故でしょうね)

誰かの腕に包み込まれるような重さを感じ、心地よい束縛が座木を微睡みの世界へ誘う。

ふわふわとした意識の中でふと、座木は違和感を覚えた。

熱を逃がさない少し重い毛布を先日おろしたが、それは間違っても腕が乗っているような、ピンポイントの重さではないはず。
徐々に覚醒していく意識の中で嫌な予感が座木を襲う。

恐る恐る閉じていた目を開くと、そこには自分の右腕を枕にし、左腕を座木の上に置きにこにこと微笑む秋が横になっていた。

「おはよ、ザギ」

透明感のある声が、耳元で朝を告げる。
思いがけず近くに感じる体温に、座木は逃げるように頭から布団を被った。

「何故、秋がここに……いつから」

「んー、目覚ましが鳴る10分くらい前かな」

「起こしてくださればよかったのに……」

「せっかく気持ち良さそうに寝てるのを起こすのは可哀想だなーと。ああ、後……」

秋が毛布をゆっくりとどけると、恥ずかしさと情けなさと原因不明の動悸が体温を上げ、耳まで赤く染める座木が拗ねたような表情で秋を睨んでいた。

「寝顔見てたら起こすの忘れてた」

寝てる姿は昔と変わらないんだな、と楽しげに言う秋がカーテンの隙間から差し込む日差しよりも優しく笑った。


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