秋さんと座木さん

「秋、下着姿で部屋を歩き回るのはやめてくださいと何度も言ってるでしょう」

タオルを肩から下げ、キッチンで牛乳を飲む秋の髪からは水が滴っている。座木の小言を煩わしそうな顔で受け流している。
秋は空になったグラスを軽く水で洗い流すと流しに置いた。

「誰かに見られてるわけじゃあるまいし、別にいいだろ」
「そういう問題じゃありません。リベザルに悪影響です」

只でさえ、男女の違いに疎いリベザルは平気で足や肩が剥き出しになった服で遊びに出掛ける。
この間も知らないおじさんに声を掛けられたと慌てて帰ってきた。彼女が人見知りでよかったと、初めて思ったのだ。

「とにかく、家ではちゃんと服を着てください。わかりましたね?」
「はいはい、わかったよ」
「返事は一回でいいです。それと……」
「なんだ、まだあるのか」

うんざりとした秋の目が座木を捉える前に視界が白く覆われた。

「わっ……」
「髪はきちんと拭いてから出てきてください。風邪を引きます」

優しい手つきで頭をかき混ぜられる。視界を覆ったのは秋の肩にかかっていたタオルだ。

「ずいぶん保護者が板についてきたな?」
「おかげさまで。はい、もう大丈夫ですよ」

余裕たっぷりに微笑む座木の顔がにくたらしい。

「かっわいくない」

秋は座木からタオルを奪い取ると、リビングを出ていった。数秒後、リベザルの叫び声が聞こえたので八つ当たりでもしているのだろう。

「全く、毎回耐えるこちらの身にもなってくださいよ…」





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