親ばか2

これはどういう状況だ。
寝起きのぼうっとした頭で零一は必死で考えた。

「ここ、俺の家……だよな?」

見覚えのありすぎる、家具が少ないこの部屋は間違いなく自分の家だ。
後ろには夜中に突然家に来た秋が寝ているが、この際無視だ。

何故零一の隣で、昨夜はいなかった秋の店の従業員であるリベザルと座木が寝ているのか。
リベザルは暖を取るように、原型の座木を抱き込み頬を擦り寄せている。
座木もまた、リベザルに寄り添うように体を丸めて眠っている。
その姿は子供や小動物があまり得意ではない零一でも心休まる光景だった。

(普段あいつが自慢してくるのもわからなくはない、な)

すうすうと寝息を立てて安らかに眠る二人に自然と頬が緩まる。


(柔らかそうだな……)

しばらく眺めることで安らぎを得ていた零一を、呼吸をするたびに上下する、ぷっくりとしたリベザルの頬が誘う。
起こさないように手を伸ばすが、緩く閉じられた瞳はまだ開きそうにない。

そっと、すべすべとした暖かい肌に触れる。

「うわ……」

人差し指で優しく突くと、包み込むような弾力。想像していたよりも柔らかな感触に、零一は思わず声をあげてしまった。
リベザル呼吸一つ乱さず、気持ち良さそうに眠っている。
起きないのをいいことに、零一は何度か頬を突つき、手のひらで頬をするりと撫で、その柔らかさを味わっていた。

後ろでその姿を見ている影に気づかずに。

「子供体温か……暖かいな」

9月に入り、少し肌寒くなってきた今頃には心地よい暖かさだ。
むにっと、リベザルの頬を摘まみ緩く引っ張る。

「んん……っ」

眉が寄り、声を漏らすが起きる気配はない。
零一は摘まみ上げていた頬から手を放すと赤毛を優しく撫でた。

「……こういうのも、悪くないかもな」

ゆったりと流れる穏やかな時間に悪い気はしない。
内職に追われ、疲弊していた心が潤っていくのを感じ、零一は眠る赤毛を撫でながら少しだけ秋が羨ましくなった。





「出ていくタイミング逃しちゃったや。まあ、いいか。ゼロイチに貸し一つっと」

知らないところで理不尽な貸しが増えているとは思ってもいないだろう。
秋は寝返りを打つと、目を閉じ眠りについた。



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