春眠/銀妙




ひらひらと目の前を蝶が舞う。
淡いピンク色の可憐な蝶。
掴まえようとする度に軽やかに翻って空に舞う。
それはそれはもどかしいけど、何故だかとても楽しかった。



目を開けると、見慣れた天井が見えた。
起き上がって頭をガシガシ掻きながら欠伸を一つ。
そのまましばらく目を閉じて何か考えてるようだったが、ため息を一つついて天井を見上げた。

「あ〜〜〜…なんかすげェいい夢見てた気がすんだけどなァ…」

忘れちまったな、と呟くとまた目を閉じた。


暖かい陽だまりが部屋を包んでいた。
スースー、と新八と神楽の寝息が聞こえる。
眠りの気配を感じて素直に身を委ねると、あっという間にとろとろとまどろむ。

“あ…こりゃいい夢見れそう…パフェチョコ生クリームケーキ…”

夢うつつでそんなことをボンヤリ考えてると、カタン、と小さな音と共にふわりといい匂いが漂った。

「‥相変わらず開店休業みたいね」

ふわぁ‥と欠伸をして目を開けると、薄いピンク色が目に入った。
どこかで見たことあるな、とボンヤリ考えていると、妙が銀時の隣にすとん、と腰を下ろした。

「あんまり寝ると脳が溶けるんですよ」
「この季節は寝るためにあんだよ。春眠暁を覚えずっていうだろが」
「ちょっと意味が違うと思うんだけど」

妙と話しながら銀時は頭を掻いた。
どうにも眠気が取れない。
ふと妙の着ている着物が目に入った。
桜色の地に薄紅色の蝶の柄。
ふとさっき夢の中で捉まえ損ねた蝶が頭を過ぎった。

「あぁ、コレだよさっきの…」

そう呟いて妙を引き寄せると、思いの他素直に妙が転がり込んできた。
案外、ずっと夢を見ているのかもしれない。
そう考えると何となく愉快で、銀時は小さく笑みを零した。

「ちょっと銀さん‥、もぅ!寝惚けてるのかしら?」
「まぁまぁ、いいからいいから気にすんな」

銀時の腕をどかそうとする妙を抱え込んで、銀時はゆっくりと目を閉じた。


蝶を捉まえてご満悦。
起きたら新八にぶっ飛ばされそうだけど、とりあえずまァいいか。



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