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拓磨 ハピバ

「拓磨!」
名を呼んで拓磨の腕に自分の腕を巻き付ければ、驚いたようにこちらを振り返った。
ぎゅっと手に力を込めて密着すると、焦ったように引き剥がそうとすると拓磨。
「ちょ、オイ珠紀」
「ふふー今日は甘えていいんだよ拓磨!」
「はぁ?何言ってんだ…というか離れろって」
「嫌?」
「…じゃない、が…」
見上げれば照れてるのか頬が少し染まっていて、思わず笑ってしまう。
眉を寄せた拓磨にごめんと謝って、一度離れる。
それから、満面の笑みを浮かべて。
「拓磨、誕生日おめでとう」
するときょとんとしたあとすぐに笑った拓磨が、珠紀の腕を引き。
わっ、と拓磨の方に倒れ込んだ珠紀を腕の中に収める拓磨。
「拓磨…?」
「…有難う」
珍しく素直な拓磨に微笑んで、強まる腕の力に嬉しくなりながら珠紀も背に腕を回した。
「大好きだよ、拓磨」
それから自分も素直になってそう告げれば、恥ずかしそうにしながらも俺もだ、と言った拓磨の頬は赤く。
胸板から顔を上げると、優しく微笑んだ拓磨から沢山の口付けが降ってきた。


2012/06/11



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