小説 | ナノ


龍之介ハピバ

「宮地くん!」
「…?どうした、夜久」
「今日、お誕生日でしょ?」
にこりと笑って宮地の元へ寄ってきた月子がそう言うと、宮地は驚いたように目を丸くした。
部活が終わり、帰り支度をして外に出た宮地は他のメンバーを待っていたが、月子以外に出てくる気配がない。
どうしたのかと疑問を投げ掛けようとした時だったからか、余計に驚いているようだった。
「えっと…違った…?」
何も言わない宮地に不安になった月子が、少し声のトーンを小さくして問う。
そんな月子に、宮地は慌てて首を横に振った。
「いや…あっている」
「良かった!あのね、よければこのまま、前に言っていたケーキ屋さんに寄らない?」
嬉しい誘いに思わず顔が綻びそうになるのを寸でのところで止める代わりに、薄く染まる頬。
月子も嬉しそうに笑って、頷いた宮地の隣に並んで歩きだした。
「お誕生日おめでとう、宮地くん」
「あぁ…ありがとう」
照れ隠しでむっとする宮地の口元を見た月子が、小さく笑った。

2012/11/06



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