小説 | ナノ


若月先生

「…って若月先生、聞いてます?」
「あぁ聞いてる聞いてる」
「テキトーに返事しないでくださいよ、聞いてなかったですよね!」
「聞いてるって言ってんだろ…オレ様のこれについて、だろ」
とん、と目の前にいるヒトミに分かりやすいように自身の耳に宛てているものを指差す若月。
それをみたヒトミはぐっと口をつぐみ、苦情の代わりに頬を膨らませた。
「で、これが何だって?」
「やっぱ聞いてないじゃないですかっ!」
すかさず突っ込み、まったく、とため息をはくとびしっと若月のヘッドフォンを指差しながら言う。
「だから、若月先生にヘッドフォンを外して欲しいんです!」
「あ?どうしてだよ」
「気になるからに決まってるじゃないですか」
得意気に笑うのは何なのか、しかし若月はそんなヒトミの腕をとり引き寄せる。
驚くヒトミを無視して自身の腕の中に収めると、少し下にあるその耳元に顔を寄せて。
「…なら、一緒に風呂入るか?」
「っ!?」
低く囁けば、びくりと肩を揺らす。
そんな反応を楽しみながら若月は、顔をあげようとしないヒトミの頭を軽く撫でながら煙草をふかすのであった。


2012/09/05



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