小説 | ナノ


寅之助 依存しろ

「ちょ、あ、まっ…トラっ!」
「うるせーな、ちっとは黙ってろよ」
服の擦れる音と、二人の声が静かな部屋に響く。
ベッドに倒れ込めばぎし、と二人分の重みで軋んだ音が鳴る。
「トラってば…!」
馬乗りになった寅之助の肩を押そうと手を添えれば、その手を掴まれベッドにキツく縫い付けられた。
その痛みに眉をよせながらも、寅之助を睨めば愉快そうに笑っていて。
歪んだ口許は色気ねぇな、と言って首筋に噛み付く。
獣のように噛み付いて、首筋に跡を残せば面白そうに離れる。
「待った、は無しだって言ったろ」
「やめ、ふっ…ん、んん…ぁ、」
なおも否定の言葉を並べようとする撫子にイラついて、長い口づけで黙らせる。
それから生理的に流れ出る涙に興奮する自分を抑えることもせずに、一旦離れて。
「早く、オレが欲しいって言えよ、撫子」
次いで啄むようなキスをすれば、もう撫子は何も言わなかった。


2012/07/11


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