小説 | ナノ


錫也 ハピバ

「すーずや!」
大きな声で愛しい幼馴染みを呼べば、こちらを振り返る。
そして驚いたように目を見開いたあと、私の両隣にいた哉太と羊くんが笑って錫也を呼ぶ。
「オイ錫也ー!」
「錫也!」
「お前ら…」
哉太が遠くにいる錫也に向かって、大きく手を振る。
私は二人の手をとって、走り出した。
驚いた顔と声に見ないふりをして、そうすれば二人は笑うから。
待ってくれている錫也の近くまで行き手を離す。
「び、吃驚させんなよ月子」
「僕は嬉しかったけど」
「もう、違うでしょ二人とも」
少しムッとした表情を作れば、二人ともごめん、と謝る。
そんな姿に錫也も私も吹き出して。
それから改まって錫也の方を向いて、三人一緒に言った。
「「「誕生日、おめでとう!」」」
そう言えば、軽く目を伏せた錫也が照れたように微笑んだ。


2012/07/05



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