第三十五話

「アンタを元の世界に戻してやれねぇ、それでもいいか?」
「お世話になり続けても傍にいたいです」
「なら俺の心配は皆無だな」


政宗さんの笑いも落ち着いてきて、私の頭を少し撫でた。
もう私どういう意味で扱われているんだろうとか、少しは疑問に思ったりもするけど、政宗さんの手が気持ちいいので何も言えないんだけど。


「アンタの”居場所”はここだ、俺の元だ you see?」
「・・・I see. もう言っちゃいましたからね、訂正ありませんね?」
「違いねぇ」

やっぱり私の居場所は此処がいい。
此処じゃないって政宗さんに言われたりしたら、たぶん立ち直れない。


政宗さん、政宗さん・・・もう愛しい以外の感情はわかない。
政宗さんの顔に近づき、そっと唇を自分から重ねた。
自分からは恥ずかしいとはわかってるけど、私だってされるばかりではなくて政宗さんに言葉以外で好きだということを表現したかった。
結果、キスに至った訳だけど。
・・・恥ずかしい。
政宗さんは政宗さんでじっと見てくるから目も逸らせられない。


「うー・・・政宗さん?」
「何だあ、名前?」
「うっ・・・・・・・・・・・・」

私は大して何かを応えられるはずがなく、黙ってしまった。
そんな中、二人で黙ったまま見つめ合う。
流れるのは沈黙だけ、私の顔は熱くなっていくばかり。

もう駄目だ、そう思った瞬間より少し先に政宗さんが吹いた。

「はははっ、アンタほんと可愛いな、はははっ」
「そ、そんな笑わなくたっていいじゃないですか!」
「仕方ねぇだろうが!
 あ、やっと泣きやんだみてぇだな」
「あ、そうですね。
 ありがとうございます」
「You're welcome.
 アンタの為なら・・・くっ、」
「どこで笑うんですか!?」
「だってな、アンタが俺のもんになってくれるってこと自体正直まだ実感がねぇんだよ、それなのに今こうやっていられてんだぜ?
 俺の傷も癒えてきたみてぇだ」
「それなら私もですよ」




未来では私たちの傷なんかまるで初めからなかったように笑えているんだろう、

笑い合っていると楽観的に考えてしまう。
でも、そうなっている気がする。
私は政宗さんと共に心を成長させればいい、たとえ時間がいくらかかろうとも。
いつか二人ともの傷が残ろうとも、癒えればいいんだ。


傷は政宗さんといることできっと癒える。
たとえ、元の世界とのお別れだって私は、政宗さんと一緒なら受け止められる。
未来の私はきっと笑顔だから。

(終)







    


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