第三十二話

「小十郎さん、ありがとうございました」
「その顔じゃ覚悟は決めれたみてぇだな、政宗様を頼むぞ」
「はいっ!」


私は覚悟を決めた。
政宗さんが私のこと考えて言っていなかったことをそれなりの覚悟を決めて今言ってくれたんだから。
私も覚悟を決めないといけない。


たとえ、愛姫みたいな良い家柄がない孤児でも・・・
最近感情ができたと言っても過言では無い不器用な私でも・・・
伊達家に何も良いものを与えられない私でも・・・


政宗さんを愛することを誓う。
政宗さんに一生を捧げることを誓う。


私は政宗さんにそのことを言おうとまだ明かりのついている、政宗さんの部屋へ向かった。
でも、決めたはずなのに足が竦んだ。

頭に過るのは私がいた世界のこと。
帰りたいと思った訳じゃない。


・・・ただ私がもし突然此処からいなくなってしまったら、政宗さんを置いて行くことになってしまう。
人には何れ永遠の別れが来る。
・・・・・・・・・それでもだ、その別れはいつ来るのかはわからない。
ずっと先だとは言いきれない。
もしかしたら明日や明後日なのかもしれない。

政宗さんを置いて行ってまた政宗さんが傷ついたら私はどうすればいい?
ー・・・そんなことを考えてた。


やっぱり私は此処にいるべきではなかったとも考えてしまう。
小十郎さんの前で覚悟を固めたはずなのに。


「・・・政宗さん、少しいいですか?」
「名前、こんな遅くにどうした?
 まぁいい、入ってこい」

政宗さんに許可を貰い、私は政宗さんの部屋に足を踏み入れた。
政宗さんは布団を被ったまま政の仕事をしていた。
まだ安静にしなければならない状態なのに彼はいつもはサボっている政の仕事をしていた。

それほどに最近は日ノ本が乱れてきているのだと実感できた。
そんな日ノ本でも人一倍傷ついている政宗さんが支えになっているものがわからない。
私がそうなりたいと願っても、私が此処の人間でない限り支え続けることができない可能性はずっと存在する。


「政宗さん、昼間の話ですが」
「返事をくれるのか?」
「・・・はい。
 私は政宗さんのことが好きです、今もこれから先もずっとずっと。
 でも、です・・・」
「でも?」
「私は御存知の通り此処の人間ではありません、いつ何処へ行ってしまうのかもわかりません。
 政宗さのずっといたいのに、私は此処にいられないのかもしれないんです。
 それでも、ずっと私は政宗さんのことをー」

”想い続けてもいいですか?”


最後の言葉は震えていた。
告白でそんな状態になって、改めて本当にこの人が好きだとわからされる。


「名前、好きだ」


政宗さんはそれだけ言って、私の頭を撫でた。
こうされているだけで落ち着いてくる自分がいる。
でも、こうされている間でも不安でたまらない自分がいた。








  


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