第一話
私が心から笑えなくなったのは何時からだろう・・・。
小学生のとき両親を無くし、歳の離れた兄と二人で暮らしてきた。
小学生なりとも兄には嫌われたら生きていけないというプレッシャーを背負い込み、いい子でいなければ生きていくことができないと思い込んで過ごした。
しかし、一緒に暮らしてきた兄が私が高校に上がると同時に結婚し、家を出た。
家を出たのは私が勧めたからだった。決して、私を置いていったのではない。・・・私が兄の背を押した。
それから、自分で起こした通り一人ぼっち。
いつの間にか、素の自分は世間には出していない。
友達と呼べる人がいても親友でもなく、本当の私を知らない。
私は例えるなら、狼。
自分自身の心もわからない…溢れ出る孤独感。
いつか毛皮に全てを覆われるんだと悟って何もしない臆病者だ。
誰にも私のことをわかってもらえなくてもいい、私自身でさえも私のことをわかっていないのだから・・・。
なんて、悲しいことなんだろう・・・。
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「今日は雨かー」
窓辺から小ぶりの様子を見て朝からついつい溜息がこぼれる。雨の日は憂鬱だ。
何もかも投げ出したくなってくる。
それでも、一人暮らしなもんだから自分がしっかりしないとやっていけない。
とりあえず今日一日が過ごせるか、冷蔵庫の中を確認してみる。・・・ほとんどないか。
買い物に行かないと行けないことになり、雨がきつくならない内にスーパーへ出かける。
スーパーから出る頃には土砂降りになっていた。帰るのにも躊躇いが出るほどだ。
時間を潰してたらもうちょっと雨がましになるかもしれないが、こんなところで時間を無駄にすることも忍びない。だから、意を決して家に帰ることにした。
「うわぁー、こりゃびちゃびちゃになっちゃうな・・・」
服はもちろん靴まで水浸しになりながら、帰路に着く。轟々と鳴り響き、耳がおかしくなりそうなぐらい風もきつい。
だから、気づかなかった。
私は瞬く間に光に包まれ、トラックに轢かれた。
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