第三十一話

政宗さんの部屋を飛び出ると廊下にいた小十郎さんと目が合った。
小十郎さんは何があったのか見抜いたように軽く笑った。

「名前、顔が赤いぞ」
「あ、赤くなんてないですっ!」

否定はするも押し切れない状況となっていたので、私は話を変えようと政宗さんの話題を出した。
その時一瞬小十郎さんの顔が強張ったのが見えた。

「政宗様の意識が戻って良かったな」
「はい。本当に良かったです。
 ・・・小十郎さん、お話があっていつでもいいんですが、少し時間をいただけますか?」
「わかった、お前がそんな顔をするなら大事な話なんだろう。
 皆が寝静まった後俺の部屋に来れるか?」
「はい、お願いします。
 それでは私はお手伝いに戻らせていただきますから失礼します!」




それから、私は仕事を手伝って。
小十郎さんと話す約束をした夜を迎えた。


「名前です。
 小十郎さん、いいですか?」
「ああ、入ってこい」

襖を開けてみると、着物を着流した小十郎さんがいた。
湯あみをしたばかりなのか、髪はいつものようなオールバックではなく、髪先からは水が滴っていた。

「それで、話は・・・政宗様に何を言われた?」
「結構予想はついてるんですね。
 政宗さんのこと私は好きです、これだけは言わせてください。
 ・・・それで聞きたいのです。
 私は政宗さんの気持ちに応えさせていただいた場合、伊達家にとって今以上に邪魔な存在ですか?」
「・・・・・・昼間の話を聞いたか?」

小十郎さんは何も言わなくても一歩、二歩先のことを理解していた。
さすが伊達軍軍師だとか思ったりするけど、それはそれで助かった。

「愛姫様は史実では政宗さんの正室となる方です。
 愛姫様との子供が伊達家を継いでおられました。
 私は・・・私は想うことだけなら許されますか?」
「・・・・・・お前はどうしたいんだ?
 俺がそうしろというならそうするのか?」

小十郎さんが軍師として伊達家の軌道を修正するために今後政宗さんに近づくなと言ったとしても私は政宗さんの為になるならば、言いつけを守るかもしれない。
ただまた私の人格が崩壊する日が訪れるだろう。

「政宗さんが私の全てだと言っても過言ではありません。
 その政宗さんのご迷惑になるならば私は応えてはいけないということぐらいわかっているつもりです」
「本当に似た者通しだな、お前らは・・・」
「え?」
「政宗様がお前への気持ちを気付いた時どんな風になってたかわかるか?
 お前は政宗様に嫌悪感を抱いていただろ、その時でもいつも政宗様はお前のことを考えて何も仰られなかった。
 でも、今はどうだ?
 お前も本当にあの方を愛しているなら覚悟を決めたらどうだ?」


覚悟を・・・。
私の中で何かがはっきり見えた気がした。








  


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