第三十話

「泣くなって、そんなんじゃアンタの気持ちがよくわかんねぇよ。
 さっき好きだって言ってくれたことさえ、嘘だと思って傷ついちまう」
「政宗さん、私はあなたのことがー・・・」



『愛姫様が政宗様に嫁ぐ以上のことはー、きっとこの先ないですから』



そうだ、言っちゃいけない。
私のせいで政宗さんが筆頭である伊達軍にも迷惑が掛かる。
私の言葉で未来が変わってしまう。


「what's up?」
「わ、私なんかに政宗さんはもったいないですよ。
 政宗さんにはきっといい人が見つかりますよ」

そう、例えば愛姫とかね。
・・・そんなこと言えるはずがなかった。
私の臆病な気持ちが邪魔をした。

政宗さんはそんな私の曖昧な答えに怒りもしなかったし、笑いもしなかった。
何とも言えなそうな顔をしていた。

・・・まただ。
政宗さんにこんな表情をさせるのは。
迷惑掛けたくないと、そんな表情見たくないと思っていても原因は私。
私のせいで結局は政宗さんを傷つけてしまっているんだ。


「・・・その返事は待ってたらもらえるのか?」
「勿論です、でもこれだけは言わせてください。
 私も本当に政宗さんのことが大好きですから」
「んなこと言ったら、俺の方が仕方ないな・・・」
「え?」

次の瞬間には政宗さんが私を抱きしめ、頬に口付けを落とした。
それはこの前のようなものではなく、軽いものだった。

「これぐらいはしてもいいだろ?
 南蛮じゃ挨拶代わりにkissをするんだからよ」
「そうですね、してますね」
「何かアンタ俺のkissには慣れたみたいに感じるんだが、これは喜んでもいいのか?」
「えぇっ、私慣れた訳がないでしょう!
 政宗さんにされていっつも心臓バクバクです!!」
「ふっ、はっはっは」

政宗さんが吹き出したと思うとお腹を抱えて笑い出した。
ええー・・・、これってさっきの私の言葉のせい?
笑うのが止まりそうにない。


「ちょ、政宗さん?」
「ほんとにアンタは俺を喜ばすのがうまいな、これじゃ俺が勘違いしちまうだろ」
「からかわないでください、勘違いしてしまうのは私の方なんですからー・・・っ!」


口から出てしまった。
”勘違いしてしまう”

そう口が滑った。
その言葉に政宗さんは私を見て笑った。
でも、それはいつも皆の前で笑う、余裕ぶったものでは無かった。
その自然な笑みに私の胸の動悸は止まらない。


「あ、あのっ!失礼しますっ」

じっと見られて恥ずかしくなったのは私の方ですぐに立ち上がり、政宗さんの部屋を飛び出した。







  


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