第二十八話

私を起こしたのは、小十郎さんの声だった。
どうやら私を布団に戻してくれていたらしく、私は起きると布団の上にいた。

「あのまま眠ってしまうとは思わなかったぞ」
「すいません、政宗さんと一緒にいたくて。
 ・・・まだ戻られないですか、意識は」

小十郎さんは重々しく首を横に振った。

「あれから戻られる気配は無かったようだ。
 ただ身体的にはだいぶ回復しているようだ。
 あとはご本人の意思次第らしい」
「政宗さんなら生きたいと思われるのではないんですか?」
「お前も知っている通り、政宗様の過去は過酷だ。
 幼少のころがもしも今でも影響があるなら何とも言えねぇな・・・」
「そんな・・・」


小十郎さんも辛いんだろう、主の意識が戻らないのは。

「私ができることは何もないんですか・・・」
「だから、とにかく信じて待ってろ。
 それから、政宗様の意識が戻ってから政宗様との未来を考えればいい」
「私にはそれだけしかないじゃないですか。
 医師の方は政宗様の身体を支えているというのに、私は支えているどころか、私が原因となっているというのに・・・」
「だから、だ!
 政宗様にとってお前は特別だ。
 意識が戻った時に笑顔でいられるように準備してろ」

小十郎さんは私の頭をくしゃくしゃと撫でた。
大きく撫でたために髪は大分乱れた。
でも、その小十郎さんの手に何だか安心した気がした。



それから、私は毎日女中としての仕事をしながら政宗さんの所と神社を往復し続けた。
ただ、政宗さんが戻ってきてくれることを信じて。









  


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