第二十四話

私がひとりでしょんぼりしながら政宗さんを待っていたら、聞き覚えのある声が聞こえた。

「っ、くそっ」

小十郎さんの声だった。

「小十郎さん!?」

廊下には小十郎さんがいたのが襖の隙間から見えた。
思わず、叫んでしまった私に小十郎さんは肩を大きく動かして驚いていた。

「・・・名前か?」
「はい、私です。
 それより、小十郎さんがどうして此処にいるんですか?」
「それより、じゃねぇ!
 政宗様がどれだけお前を心配したか、わかってるのか。
 今は俺も付けねぇってのに政宗様がどうなってるか・・・」

嘆くように、小十郎さんは溜息をついた。

「ごめんなさい、ご迷惑をお掛けしてしまって・・・」
「俺に謝るな、帰ったらちゃんと政宗様に謝るんだぞ?」
「はい、勿論です!
 ・・・それで、小十郎さんはどうして此処にいるんですか?」

隣の部屋の襖ががたっと閉まる音が聴こえた。
どうやら、小十郎さんは隣の部屋に入れられたらしい。
声は部屋を越して聞こえてくる。


「俺は・・・竹中に襲われてしまってな」
「・・・そうですか。
 政宗さんは大丈夫なんでしょうか・・・・・・」
「心配か?」
「はい」
「政宗様への気持ちの整理はついたか?」
「え!?」

一瞬心臓がドキッとした。
え、小十郎さん・・・?

「その様子だとちゃんとついたみたいだな」
「・・・否定はできませんね、そこまで言われてしまったら」
「それは良かった。
 言っておくが、政宗様はお前に向けている感情は全て同情じゃない」
「・・・・・・どういうことですか?」
「政宗様の心が傷ついているのは現在で進行しているからだ」
「政宗さんが、ですか・・・?」


政宗さんは人を信じれない気持ちは無くなった、と言っていた。
でも、小十郎さんが傷ついていると言ったことは。

「察した通り、政宗様はそれに気がついておられないまま、一人傷ついている。
 その気持ちを和らげれるのは俺じゃねぇ。
 似た者同士の、お前だ」
「私、が?」
「そうだ」
「でも、でも、私は政宗さんを振り切って出て行ったんですよ?
 傷ついている政宗さんに最低なことをしたんですよ?
 小十郎さんはそれでもいいんですか?」
「お前なら政宗様を任せられる、だから信じて待ってろ。
 ・・・俺はちょっと話があるみたいだからな、待ってろ」

小十郎さんがそう言ったとたんに、廊下に人が歩いている足音が聞こえてきた。
隣の部屋まで言ったらしく、足音が増えた。
小十郎さんが出たんだということぐらいはまだわかる。
私は再び、一人になってしまった。










  


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