第二十三話

いつの間にか、朝が明けていた。
そして、私がいる部屋には必要最低限だと思われる食事と水が用意されていた。
・・・とりあえず、人質だというのに扱いがひどいものだと思う。


それにしても、私はいつもより気持ちがすっきりしていた。
昨日さんざん泣いたせいか、気持ちの整理がついてきた。

とにかく、自分が政宗さんのことが大好きだという事実を知れたことだけでも心の底から嬉しかった。
私は人を好きになることができたんだ。


でも、それとそれ。これはこれ。
政宗さんが好きだとわかっても彼は来るはずがない、私なんかの為に。

『放っておいてください!』

そんなこと言わなければ良かった。
確かに同情的に何かをされるのは嫌だった。
それでも、その政宗さんの同情の手に捕まっていれば、私は此処にもいることはなかった。
私は自ら蜘蛛の糸を離してしまったみたいだ。
今更ながら、自分は馬鹿なことをしてしまったんだと実感してしまう。



「名前君、起きたようだね」
「ああ、おはようございます。
 あなたも朝から大変ですね」
「まあ、好きでやっていることだからね。
 ・・・ひとつ、僕を賭けをしないかい?」
「賭け?」
「政宗君が来たら僕の勝ち、来なければ君の勝ち。
 君は昨日自信満々に言っていたようだけど、どうする?」

来ないことは確かだろう。
私が来てほしいと願っても、信じても。

「私はいいですが、賭けるものがないです」
「なら・・・、君には政宗君の六爪のひとつをとってきてもらおうかな。
 天下を獲る豊臣に降伏した伊達の証として」
「天下を獲る・・・?豊臣?」

豊臣、豊臣・・・言ってた訳だけど。
豊臣秀吉の・・・?

「豊臣秀吉が天下を獲ったとしてもどうなるかわかっていないんですね」
「どういうことだい?」
「”織田がつき、羽柴がこねし天下餅、すわりしままに食うは徳川”という言葉・・・、御存じあるわけがないですね。
 とりあえず、まあ天下は取れますが豊臣政権は長くは続きません。
 終いには豊臣さん滅亡です」
「ふふっ、君は冗談が好きなようだね。
 そんな尤もらしい予言をしたって僕の意見は変わる事は無いのに」

そうだ、この人は私が未来から来たということは知らない。
だから、何を言ったとしても無駄でしかない。
頭のおかしい子が何かを言っている、程度のことになってるんだ。


「・・・もういいですよ。
 それで、私は何を貰えるんです?」
「・・・そうだね、君の好きなものをあげよう」
「また、随分と太っ腹なことで」
「何とでも言ってくれよう。
 僕は約束は心配しなくても必ず守る」
「まあ心配はしてませんがね」
「じゃあ君はゆっくりと政宗君を待っていればいいよ」

竹中半兵衛は私を見下したように笑い、部屋を出て行った。












  


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