第二十二話

政宗さんが来るわけない。
政宗さんを振り切った私の元に政宗さんが来るわけない。
・・・だいたい、政宗さんも私がいなくてすっきりするはずだ。
養わなければいけない人間がいなくなったのだから。
血の繋がりもなければ、主従のような繋がりもない。
言ってしまえば、伊達家の中で一番浅い付き合いにもなる。
ただ、同情されて拾ってもらっただけ。

私に政宗さんを困らせる要素は何もない。
だから、捕まっても問題は無い。
大丈夫・・・、

そう考えても何故か私の目から涙が零れ落ちた。

「私はどうしたんだろ・・・?」

何が悲しいのか。
後悔はあると言えばある。
伊達家の皆さんにお世話になりました、と言えなかったこと。

でも、それぐらいだ。
・・・それでもだ。
いざ死に直面した時にそれが涙を流す原因になるとは考えられない。

私は再び、自分をコントロールできなくなっていた。
こんな自分が本当に嫌だ。
そんなこといったい何度思ったことだろう。


それでも、そんな私に政宗さんは光を翳してくれた。
私がこの世に来て笑えたのは政宗さんのおかげだった。

でも、今こうして政宗さんと離れて笑うどころか、自分の感情がままならなくなっている。
どうしたらいいの、私は。


「・・・助けて、政宗さん、政宗さっー」

不思議と口が噤むのは政宗さんの名前。
・・・私は嫌悪していたのにも関わらず、政宗さんが、政宗さんのことが・・・−、





大好きだったようだ。






そうだ、私は政宗さんが大好きだ。

”居場所”をくれた時本当は嬉しかった。
抱きしめられたとき人肌の温かさを知った。
同情だとわかっていても、助けてほしい。

そして、今・・・政宗さんを恋しく思っている。


「今だけ泣いてもいいかな・・・?
 どうせ誰もいないし」

私は泣きじゃくっていた。
まるで、両親とお別れをした日のように。
兄さんを生きていくと決めて、両親の死を受け入れた日のように・・・。


泣きつかれた私はいつの間にか深い眠りについていた。










  


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