第十九話

でも、そいつにもな助けがあった。

救いの手をさし延ばされた。

ある男がそいつのcomplexを抉り取ったんだよ。

それで、まあ気持ち的には楽になったんだろうな。

いつしか、人を信じれなくなった気持ちもなくなっていった。

・・・・・・・そうだな、自分みたいな奴を見てると助けてやりてぇと思うぐれぇにな。







「俺はアンタを助けたいと思った。
 アンタには俺の気持ちは迷惑か?」

そんなストレートに言われると思っている訳もなく、すぐには私は答えられなかった。

「・・・つまり、政宗さんの目には私は可哀想な子として映っていたんですね」
「別にそう言うつもりじゃない」
「そうじゃないですか・・・。
 あなたまで私を憐れむんですね、私はそんなことされる義理はありません!
 放っておいてください!!」


私は酷く感情に駆られた。
その勢いで部屋を飛び出し、終いには城までも飛び出した。


出てきたのはいいものも・・・、よくないか。
それでも、私にとって居場所は間違いなくここにはない。
私はどうして此処に来てしまったんだろう。


空には既に月が光っていた。

トラックで轢かれたんならそこで死んでしまえば良かった。
政宗さんに拾われなければ良かった。
政宗さんに会わなければ良かった。

自分ではどうにでもならないことにばかり腹が立つ。
そして、そんなことばかりしか考えられない自分に腹が立った。
だいたい、政宗さんは好きで私を拾ったわけではない。
親切心で倒れていた私を拾ったのだ。
だから、政宗さんには何の罪もない。


・・・・・・わかってる。
私はどうせ、最初から”居場所”なんて無いんだ。

政宗さんが言う”居場所”は同情から作り上げられた場所。

そんなものはいらない。
欲しくない。


私は一体何を望んでいるんだろう。
自分でもわからないよ。


「兄さん、私はどうするべきだったのかな?
 兄さん、兄さん、ごめんね・・・やっぱり私はいい子なんかじゃないよ」


人気のない通りで、私は隅で腰を下ろして泣いていた。








  


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