第十七話

「、やめてくださいっ!」

錯覚に溺れてしまいそうになる中、何とかして政宗さんを突き飛ばした。
やっとのことで離れた。
私は肩を上げて息をしてした。


「政宗さん、どうしてですか?
 どうしてそんなことするんですか・・・」
「名前、別に変な意味でした訳じゃねぇ。
 アンタが泣いてるところを見たくないんだ、落ち着いてくれ」
「・・・・・・・・・」

先程のキスは同情からの意味とかも、変な意味とかも無いらしい。
それでも、私としては駄目だ。


「失礼します」

私は政宗さんから目を逸らし、そう言って部屋を出て行こうとするが、腕をとっさに掴まれた。

「待て」
「もう話は済んだのではないですか?
 私は政宗さんに迷惑も掛けたくないんです、離してください!!
 ただでさえ、お世話になっているのにこれ以上迷惑掛けたくないんです!
 私は今は一女中です、城主様と本来ならお話しすることもおかしいんですよ」

腕を振り切ろうにも振り切れない。
さっきから、もっと力があれば良かったとばかり思ってしまう。

政宗さんは抵抗しようとする私を今度は無理やりに押し倒した。
瞬間に背中に痛みが走った。


「アンタは何から逃げてる?
 俺か、それともアンタの心自信からか?」
「・・・別に逃げてませんし。
 ・・・現に政宗さんに捕まってます」
「ha! そうだったな。
 ー、あと何回言えばいい?」
「え?」
「アンタの居場所は此処だ、此処以外に作って堪るか・・・」


”居場所”

確かに私が求めていて、拒絶する言葉だった。
矛盾しているのはおかしいかもしれない。
それでも、私の中では二つの感情が立っているのだ。


「あなたの目には私はどのように映っているんですか?」
「・・・・・・怒るなよ?
 アンタは俺の餓鬼の頃みてぇだ」
「・・・・・・」

政宗さんの小さなころ。
つまり、梵天丸のころ。


「昔話をしてもいいか?」

長くなるがな、政宗さんはそう付け加えて遠い目をしながら言った。
私は無言で頷いた。


「奥州にいた餓鬼の話だ・・・」














  


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