第十六話

私はもう自分がどうなっていっているのかわからなかった。
迷惑を掛けたくないの一心で、逆に迷惑を掛けてしまった。

「名前・・・もっと俺を頼れよ」
「・・・え?」

政宗さんは私の顔を上げさせてそう言った。
その目は決して同情的な目ではなかった。

「政宗さん何言ってー」
「俺じゃアンタの兄貴の代わりにはなれねぇか?
 真田みてぇな面だったほうが良かったか?」
「どういうことですか?」

「俺に拾われたくなかったか?」

政宗さんは叫ぶことはしなかった。
でも、感情が言葉に出ていたのがわかった。
・・・それほど私は政宗さんに心配も掛けてしまってきたし、迷惑も掛けてきたんだ。


「私は政宗さんのところで拾われて良かったと思っています、それに嘘はないです」
「なら、どうしてそんなに顔が歪む?」
「え、ー・・・」


もう自分自身がわからない。
感情も表情もコントロールもできないし、理解もできない。
今まで溜まってきたものがどっと出るように、制御もできない。


「政宗さん・・・
 私はどうすればいいんですか?
 どうすれば此処にいられますか?
 ・・・・・・・・・それとも私は死んだ方がいいんですか?」

ひとつ自分の中に出てきた”死”という言葉。

だんだん自分が壊れていく気がする。

兄さんだけが私の心の頼りで、その兄さんでさえ自分で突き放した。

もうこの世に私が頼るものは無い。

肉体的に、社会的にあったとしても・・・精神的にはある訳がない。



 
「名前、落ち着け」
「いやー、いやあ、どうせ私は、私はっ」


「名前!!」


混乱している私の唇に温かいものが触れた。

政宗さんの唇だった。

・・・・・・・・・・政宗さんが私にキスをしている。

離そうとするにも、政宗さんの力が相手では離れられない。
そして、そのキスが温かくて抵抗することなど無駄だという錯覚さえ覚えてしまいそうになる。
そんな中、ただ私の目からは涙が毀れていた。

温かいと思ってる反面、どうしても人が怖かった。
私によくしてくれる政宗さんでさえも・・・。










  


×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -