第十五話

「アンタに言っておきたいことがある」

政宗さんは少し重々しく、苦笑いしてそう言った。
・・・私何かしでかしてしまったんだろうか。
不安が私の胸の内を占める。


「とりあえず座れ」
「わかりました」

その場に座ろうとすると政宗さんが手を引いて、自分の上に座らせた。
つまり、私は政宗さんの膝の上に座っているということで一気に羞恥心、罪悪感が込み上げてきた。

「ちょ、政宗さん!?」
「いいから黙って座ってろ」

ついには手を回されて私は身動きが取れない状況になった。
まさかここまで来てこんなことをされるとは正直思わなかったもんだ。

「政宗さん、用事があったのではないですか?」
「そうだな・・・。
 アンタは俺が嫌いか?」
「嫌いじゃないですよ。
 お世話になっている人を嫌う人間が何処にいますか?
 下剋上の世で生まれたんではないんですよ、私は」
「・・・そうか。それは良かった」
「政宗さん、私はそんなに信頼が無いですか・・・」

当然と言えば当然だ。
まだ会ってそんなに日が経っている訳ではない。
家族でもないし、家臣でもない。
何でもない私がこうして伊達家にお世話になっていること自体本来おかしいことなのだから。

「俺はアンタに好かれてぇって思っちまうな。違う世の人間なのに」
「何を言ってるんですか、私は政宗さんのこと好きですよ?」
「どういう意味でだ?
 アンタは自分のこともわかってるのか俺は心配しちまう」
「仰ってる意味がよくわかりません・・・」

まるでさっき話した猿飛佐助の様だ。
物言いがはっきりしない。
そういやさっき、”同族嫌悪”とかいう話題を出されたけど。
私は政宗さんが嫌いじゃないし、好きだと胸を張って言える。


それでも、自分のことが自分でわかっているのか心配をされる。
そんなことを心配されることは今までなかった。
皆無関心の中で育ったからかな?

政宗さんに心配されるほどに私は不安定な子に映っているのかな?
政宗さんの目には私はどう映っているの?

私は・・・
どうなってるの?

どうすればいいの?


「私はもうどうすればいいのかわかりません・・・」

溢してしまった胸の内の言葉によって政宗さんの腕に込められた力は強さを増した。
政宗さんにこんなこと言っても無駄だとわかっているのに。

もしかしたら、それほど今の私は重症なのかもしれない。







  


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