第十一話

政宗さんの話によるとこの目の前にいる真田幸村は政宗さんのライバルなんだと・・・。

史実通り年齢も同じということで、見ている限り仲が良さそうだ。
この二人は関ヶ原じゃ違う軍に付くのにどうなるんだろ?
ふとそんな疑問も浮かんだけどすぐに忘れる。

私が気にしちゃっても仕方ないし、それにこの世界は何処か私がいたところと違う。
皆戦国時代の服装をしている訳でもないし。
何かとおかしい。




「して、名前殿も真田の姓をもっておられるのでござるか」
「え、あ、はい」
「そうでござるか、真田がこの先も残ることなるのなら某もいつ死んだとて不満はありませぬ」
「おいおい、縁起悪いこと言うなよ」
「そうでござるな」
「でも・・・えと、真田さん?」
「幸村でいいでござる」

今更言うのもどうかと思われるかもしれないけど、真田を残したのは貴方のお兄さんの信幸、・・・後から信之になるんだっけ、?
まあいい。
それで、幸村は名を残す。


大阪夏の陣じゃもしかしたらのことが起こるのかもしれないんだから。


「幸村さん、貴方はしっかり名前は残しますよ」
「未来でもでござるか・・・?」
「はい、しっかりと。
 最近じゃ戦国ブームが来た時には凄く幸村さんの名で騒がれる方もいましたし」
「Ah〜、真田、だけか?」
「勿論政宗さんもですよ」


ちょっと未来の人達に嫉妬してしまったのか。
拗ねながら聞いてきた政宗さん。
普段とのギャップで少し笑いそうになるのを私は抑えながら答えた。

その途端、また冷静ぶって曖昧な返事を返す。

「俺は天下を取れりゃそれでいい」

その言葉は私とってはどう答えていいのかよくわからなかったのだが。
結果的に私が知ってる日本史じゃ政宗さんが天下を取ることは無い。


『あと十年早く生まれていたなら・・・・・・』


政宗さんのあの有名な台詞。
今自身に溢れている政宗さんが言うのだと思うと胸が痛む。

だから私は気の付いたことも言えずただ取れることを願っております、と返した。


「名前殿?」
「あ、はい、何ですか?」

しばらく会話が入ってこなくて少しボーっとしてしまった。
それで心配を掛けてしまったらしい。
幸村さんが心配そうにこちらを見ている。
その仕草でさえ、兄さんを思い出してしまったりもする。


「すいません、ちょっとボーっとしてました」
「起きられたばかりなのだからそれは仕方のないことだとは某は思う。
 ・・・某が気になったのはそうではなくて、思い違いだったら悪うござるが、名前殿」
「はい?」
「某を兄上と重ねてはおらぬか?」
「え・・・」

見透かされた?
それとも偶然に・・・?

でも残念ながら幸村さんは冗談を言ったような顔はしていない。

「すいません、でも兄と重ねてるとかじゃなくて・・・ただ少し思い出してしまって・・・」
「某としては別に言うことはないでござるが、名前殿が寂しければ何時でもこの幸村会いにいくでござる」

幸村さんはそう笑って私の頭をそっと撫でた。
その手の大きさも、温もりさえも重ねてしまう。


「ありがとうございます、でも私は本当に良くしてもらってますから寂しいなんて思うことはないので安心してください。
 私は今十分に幸せですから」

「それならいいでござる」

幸村さんはそう言ってにっこりと笑った。
・・・何この可愛い生物!?
今まで見たすべての可愛いものを上回りそうになるくらいの可愛い笑顔が向けられた。
それに私はドキッとしてしまい、政宗さんには笑われた。

「それにしても真田、こいつにはそんなことしておいて破廉恥とか叫ばねぇんだな?」
「名前殿は政宗殿が連れてきた女子である故に。
 あと某にも礼儀は弁えているつもりでござる」


それは政宗さんが連れてきてなかったら私どうなってたのかな?
破廉恥って叫びながら物を壊すということも聞いたし。

今思えば政宗さんに拾われてよかったなー、って思ったりした私だった。












  


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