第十話

『兄さん、ごめんなさい、ごめんなさい・・・』

『何を謝る、名前?』

『私、兄さんが思ってるみたいに素直な子じゃないんだよ、嘘ついてごめんなさい』

『名前、お前は俺の自慢の妹だぞ?』


兄さんが私を慰めるように頭を撫でた。
その手が懐かしくて、温かくて・・・

その夢の中で、私は初めて素直に慣れた気がした。






目が覚めるとそこは和室の布団の中。
でも、政宗さんの城とは違う。

「大丈夫か」
「あれ、政宗さん・・・?」

横を見ると政宗さんがいた。
あれ、私甲斐に着いたとたんに倒れちゃったんだっけ?

「すいません、いきなり倒れちゃって」
「それはもういい、だが体調が悪いならちゃんと言えよ?」
「はい、すいません」

「政宗殿、名前殿は起きたでござるかー?」

襖が開いたと思ったらそこには真田幸村の姿があった。
やっぱりもう一度見ても自分の兄に似ていると思う。


「名前殿、某の顔に何かついてるでござるか?」
「ーあっ、すいません。
 知ってる人に凄く似てるんですよー」
「某・・・が、でござるか?」
「もしかしてアンタのbrotherか」
「え、何でー」

ぽかーん、としたような顔をしていたら政宗さんはクスクスと笑った。

「アンタ自分が言ってたこと覚えてねぇのか?
 さんざん言ってたのは寝言か?」
「え、寝言をひたすらに言ったんですか!?」

その事実は女子としてショックだよ。


「政宗殿、女子の寝ているそばで寝言を聴きいれるほどに近づくなど破廉恥なっ!!」

私を心配してか、政宗さんを咎めるためか叫ぶ真田幸村。
見てたら面白いね、何度も聞かされる方は大変そうだけど・・・政宗さん見てたらそう思った。

「政宗殿はそういうことをする男など情けないと思わないのでござるか!?」
「何固いこと言ってんだ、俺は寝込みは襲っても寝てる奴は襲わない主義だ。
 それでいいだろ?
 それに、アンタもいつまでもそんなんじゃ嫁ももらえなくなりそうだな、ha!」
「よ、嫁など破廉恥な!!」

「っ、ふっ」
『名前?/名前殿?』

私はとうとう吹き出してしまい、二人は顔を見合わせてから私の方を向いた。

「すいません、お二人の会話が面白くって」
「それはいいでござるが、某貴殿の兄上にそんなに似てるでござるか?」
「はい、”破廉恥だー”って叫ぶところあたりなんて似てますよ」
「こんなに面倒な奴がこの世に二人もいるとはな・・・」
「な、何おうっ!?」


『はははっ、はは』


久々にこんなに声を上げて笑った気がした。
こうやって笑えたのは兄さんの夢を見た後だからかな?



”兄さん、神様ですかっ!?”

・・・なんて、馬鹿なことを考えていた私であった。












  


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