第九話
「久しぶりだな」
「そうでござるな!
−、して其方の女子は?」
いや、この人は兄さんじゃない。
兄さんに似た人だ。
冷静に考えて声を出そうとする。
「わ、私っ、名前と申します、こちらの政宗公の付き人として置かせてもらっておりますれば・・・」
「そうか、某は真田源次郎幸村と申す!
若いのに貴殿も大変であろう。
此処にいる間ぐらいは寛いでいけば良かろう」
「あ、ありがとうございます」
「・・・・・・政宗殿、先程この女子の声に似た悲鳴が某の耳には届いたがもしや、馬を共に乗っていたのであろうか?」
「ああ」
「はれんちでござらああああああー!!」
『っ!?』
いきなり破廉恥と叫んだ真田幸村さん。
よく考えたらこの人もまたもの凄く有名な人なんだよね?
私の中での武将のキャラブレが激しく起こっている。
でも、今気にしてるのはそういうことではなくて。
兄さんに見える、目の前の真田幸村が。
「兄さん・・・」
ショックで脳貧血を起こしたのか、私の意識は薄れていってしまった。
すぐさま私を受け止めてくれた政宗さんに謝りながら、私は意識を手放した。
音もない世界で、真田幸村が私を心配し叫び続ける声だけは頭に響いていた。
『私本当は兄さんに出て行って欲しかった訳がないんだよ』
元の世界で兄さんに会う夢を見た気がした。
← * →