第七話

『兄さん、私やっぱりおばちゃんの家に行った方がいいんじゃ・・・』

『心配するな、名前は絶対に守って見せる。
 だから、兄さんを信ていろ』

『でも、兄さんだっていい歳してるんだよ?
 お嫁さんが来たら私はどうしたらいいの・・・』

『よ、嫁など、破廉恥なっ!!
 ・・・こほん、と、とにかく心配するな。
 兄さんはお前を捨てて等いかない』

『ほんと?お館様に誓える?』

『勿論、お館様にも誓える。
 ほら指入りだ』

『うんっ!』







兄さんがいたころの夢を見た。
今思うとその時自然に笑ったのが最後だった。

うんー?
自然にっていうか、言葉にしにくいけど・・・確かに私が心細さを感じたのはそこからだった。


”兄さんは元気にしてるのかな?”


もしかしたら、私自体が消えてるかもしれない向こうの世で私が思うのはそれだけだった。
もう少し言えば、家がどうなってるのかとか心配なことは心配なのだけど。
でも、今此処に私がいることは事実なのだから仕方ない。


今日もお世話になる伊達家の為尽くそう、そう思って政宗さんを起こしに行こうとした時ー、

「Good morning!」
「え、政宗さん、え!?
 ご自分で起きられたのですか!?」

部屋の襖を開けようとした途端に政宗さんが出てきたものだから驚いた。
いつもは本当にぶっちゃけ言うと、寝起きが悪い人だ。

「そんなに驚くなよ、軽く傷つくだろうが・・・。
 ま、いい。
 今日は甲斐へ行く、アンタ付いてこい」
「え、でも私はー」
「アンタは俺の付きだったろうが」

政宗さんの押しに敵う訳もあらず、私は付いていくことになってしまった。




出発の準備を済ませ、私は馬に無理やり乗せられた。
っていうか、この馬、マフラー付いてるんですけど?
まさかのバイク風ですか!?

何だか最近戦国時代のイメージが壊れたりもしていくこともあるけれど、もうこの際どうだっていい。


『いやぁぁーーーーーっ、待って、待って!
 速いです、駄目っ、降ろして、やぁーーーっ!!
 政宗さん、お願いだから、手綱持ってぇぇーーーーーーーー』


私の悲鳴は森の中を響き渡った。
馬と言っても跳ぶわ、駆けるわで・・・初めて乗る私が付いていける訳がない。

しかも、私と一緒に乗ってる政宗さんは手綱にノータッチだ。
危ないよ!
落ちたら終わりだよ!?

後ろから両手で私を抱きしめてるものだから、落ちれば当然私だって道連れ・・・。


神様、本当にいるなら落とさないでください・・・


そう、祈り続ける中ただただ甲斐へ馬は走っていった。













  


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