第三話

拾われたとてただでお世話になる訳にはいかない。
だから、私は客間を出て政宗公のところへ行った。

「失礼いたします」
「・・・名前か、どうした?」
「御陰様でお世話になることは決まりましたが、私は何かお手伝いすることはできませんでしょうか?」
「Ah-?手伝いか、アンタは俺の女だって言ったよな」
「はい、確かにお世話になる女ですよ?
 ただでお世話になるのは、ちょっと・・・」
「・・・意味が違って伝わってんのか」

何かを小さく呟いた政宗公。
何を言ったことやら・・・。

「つまり俺に奉仕でもしてくれる、と?」
「此処でできることは限られている状態ではあると思いますがね」
「そうか、俺夜伽の相手でもしてくれ」

無駄にセクハラを働いた政宗公に私はにっこりと笑った。
私が不快だということが笑顔越しにもわかったみたいで政宗公は引いた。

「政宗公・・・このお城で侍女さんとかのお手伝いなどはさせてはもらえませんか?」
「それぐらいなら別にいいが・・・”政宗公”ってやめろ」
「あ、名前じゃ駄目でしたよね、すいません。伊達、ー様?」
「”政宗”だ、伊達と様はやめろ」

まさかの呼びすてとは。
意外なノリの軽さに正直驚いてしまう。

「じゃあ、改めまして政宗さん」
「その”さん”は何だ?」
「あくまでも拾われた身ですよ、you see?」
「まあいい、侍女なら喜多に任す。
 おい、喜多!」

襖の向こうに叫ぶなり、足音が近づく音がした。

「政宗様、お呼びでございましょうか」
「喜多、こいつがいろいろ手伝いたいそうだ」
「え、本当ですか?政宗様付きもできる方でしょうか?」
「ああ、それがこいつにとっては一番楽だろ」

政宗様付き・・・、何それ?
喜多と呼ばれた女性は少し目を丸くしていたし、政宗さんは笑ってるし。

「えと、名前さん。
 私喜多と申します、政宗様の側近の影綱の義姉です」
「あの、よろしくお願いします!」
「いえいえ、こちらこそ。
 影綱にも少し話は聞いていましたけど、ほんと礼儀が正しいですね」
「そんなっ・・・」

しかし、驚いた。
この優しそうに笑ってる喜多さんが、あの怖そうな顔をしていた小十郎さんの義姉様だったとは。
まともにあの人とは話した事は無いが、第一印象は申し訳ないが最悪である。

「ではしばらくここで政宗様が政をしているか見張っておいてください。
 もし逃げようとしましたら、影綱を呼んでください」
「え、えと、はいっ!」

仕事が見張りだなんて少し驚いたけど、政宗さんを見ていたらわかるような気もする。
この人、確かに逃げそうだ・・・。

「あんまり気張るなよ・・・・」
「そんな訳にもいきませんよ?」

思わず政宗さんをガン見してしまう私を見て政宗さんは苦笑した。
きっとその姿はおかしいけれど、私にすることが大してないもので正直暇な訳である。


「頑張るのはいいが、無理すんな。
 ・・・アンタの居場所は心配しなくても此処にある」
「え、何か言いました?」
「いや、何でもない」




本当は聞こえていた。

”居場所”
確かに私は此処で作りたかったのかもしれない。

そんな心情をすぐに見透かした政宗さんが少し怖かった。









  


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