06.猫が剥がされた
中へ通してもえば、女である私は別室へ行くこととなった。
別に初めてのことではないし、船で待ってろというよりも、いい待遇だろう。
ちなみに、軍のほとんどは船の中で待機だ。
『長曾我部妹…貴様は奥の部屋で待っていろ』
石田さんのその言葉に素直に従って部屋に入ってみれば、少し狭く作られたような部屋。
見事に何もなく、退屈だと思いながらも大の字に転がってみた。
その瞬間だった。
がたっ、そういう音がして、麩が開いた。
「わあっ!?」
「…ぬしが、長曾我部の」
いきなり麩が開いたことにも驚いたけど、入ってきた人が御輿に乗って浮いてきたものだから驚きを通り越した気分。
大坂の文明の発達に声も出ない。
だけど、きっとここで動揺したら田舎者だと認識されてしまうのだろうか…。それだけは、避けたい。何故か。
「………は、初にお目にかかります。長曾我部元親が妹、千祥と申します。
以後お見知りおきを」
ついでに言うと、先程から大の字に転がってる光景は私の中では無かったことにしている。
普段より行儀よく挨拶しているのも言うまでもない。
「われは大谷、と言えばわかるか」
「ええ。大谷吉継様ですよね。
四国といえども、名は存じております」
「そうか………ぬし」
「はい?」
「先程の格好とはえらく違うな」
「うっ…」
この人絶対性格悪い。
顔を布で覆っている人ではあるけれど、絶対笑ってるよ。
「何のことでございましょう?」
だからと言って、そっとやちょっとで負けたくはない私。
「先程の格好、ぬしが大の字に―」
「参りました」
結果的には負けたけれど。
結果より過程を重視したい派だから。
「長曾我部の末娘はなかなかのお転婆娘で、見合いも―」
「これ以上は勘弁してくださいませ」
「これでも、折れぬか」
「へ?」
きょとんとする私に、ヒヒッと笑う。
「大坂まで遠かったろう。
われの前で猫を被らず、ゆっくり過ごせばよい。そのためのこの部屋よ」
「大谷さん…あっ、でも、私実際はそんなにお転婆とかじゃないんですよ!?
あと見合いもこちらから断ってます!!」
「向こうからでも嫁が戦に出るとなれば、断られても不思議ではあるまい?」
「でも、私から断ってるのも事実なんです!」
男の人はだいたい選ぶ方だし、大谷さんぐらいの人間となれば、選り取りみどりなんだろう。
絶対分かり合えない悩みなんだろう。
だけど、この時の世間話のような会話は楽しくて。
私の悩みを解決してくれるような人が、こんな人だったらなんて思ってしまったのだった。
ただ、この人…私の心の傷を気軽に抉る人は避けたい。
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やっと刑部が出てきたーーー\(^^)/
そして口調がイマイチ私の中でしっくりこない事態が!!!
これからなんとかしていきたいものです…
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