04.続かなかった太平

船から降りて、またいつものように宴会を始めるんだ。
呑気にそう思いながら、丘に上がると、信じられない光景が広がっていた。


荒れた土地。
崩れた館。
血の流れた地面。
死にいく人々の顔。



「な、に…これ…?」

夢だと一瞬思った。
しかし、咄嗟に叩いた自分の頬は確かに痛みを感じていた。


「アニキー!!大変だ!!俺たちの国が、俺たちの国が…徳川の軍勢にっ!!!」

「何だとっ!?」


徳川って、家康さん…だよね。
報告と共に兄貴に渡された千切れた旗。
それは確かに徳川の葵の紋だった。


「どうして、家康さんがこんなことを…」


家康さんと言えば、兄貴と共に戦場を走り回ったこともある人だ。
友として互いに信じ、海を隔てたこの地であれども、何度も兄貴に会いにきた人でもある。


「…ここもか」


聞き覚えのある声に振り返れば、この地には似合わない人物が立っていた。


「毛利…?」

「長曾我部…貴様と時を同じくして奇襲にあった。これが何よりの証拠よ」


安芸にいるはずの毛利さんが、今兄貴と同じように徳川の旗を掴んでいる。
全体に動揺が走った。


「確かにこれはあいつの旗…なぜ、こんなことを…」


崩れ落ちる兄貴に、冷静にその姿を見つめる毛利さん。
二人の間に流れる空気。珍しく静かだった。


「毛利、アンタとはしばし休戦だ」

「よかろう。我もそう暇ではない」

「アンタこれからどうする気だ?」

「我ならばまず疲弊した国力を戻す。次に…石田三成と手を組むであろうな」


自分の国も同じように大変な状態であるのにもかかわらず、毛利さんは淡々と話す。
その時兄貴の息を呑む音が聴こえた。


「凶王…石田、三成」


名前は聞いたことはあった。
亡き豊臣秀吉の臣下であり、秀吉に歯向かうものなら誰であれ斬滅するという。


「あやつは豊臣秀吉を討った徳川家康を恨んでいる。…手を組むとなれば、都合がいいであろうな」

「はっ…頭がいいってのは便利だな、毛利さんよ!
 その案、検討させてもらうぜ」


石田三成という男を名前ぐらいしか知らないわけだから、兄貴がすぐに案を飲まないことにまずはホッとする。
それは私だけではない。長曾我部軍全体の思いだった。



「家康…お前の心はどこにあるっ…」


呟くように吐き捨てた兄貴の言葉に恨みは含まれているのか。


「アニキ!俺が家康さんとこ行って確かめてきます!!」

「安兵衛…おう!頼むぜ!」



兄貴の心の内の真を知るのが怖くて、私には確かめることができなかった。





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まだ刑部が出てこないヽ(´Д`;)ノ
自分でも話を作るときに覚悟はしていましたけど…
ちなみに、こちらの話は舞台瀬戸内○嵐の話をガガッとアレンジした感じで進みます




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