10.少女と不安

鶴姫ちゃんが怒ったとの一言でしばらく大阪でお世話になることが決まった私。
別れ際の兄貴の心配のしようは凄かった。


『千祥…同盟したとはいえ、毛利がいやがる。絶対寝る時も太刀離してんじゃねえぞ?』

『いやいや、心配しすぎだって』

『なんなら、鶴の字盾にしてでも生き残れ』

『ちょっと、海賊さん!それは私に失礼です!』

『てめえの話なんて知らねえよ!だいたいあんたが俺の妹を道連れにしてるんだろうが!』

『私なら大丈夫だから!!兄貴うるさい!!』


船の出港を見送らされることとなり、精神的にも肉体的にも疲れた。


だけど、ふと帰り際に船に残っていた親貞兄様に言われた言葉。
それが私の心をさらに引き締めた。


『毛利には目を配らせておけ』


冷静になっていなかった兄貴の代わりの言葉だろう。
また、その言葉がきっかけとなって、サヤカ姉様のところを去る時に言われた、『毛利には気を付けておけ』…その言葉を思い出した。


いくら同盟を組んだと言えども、乱世の、しかも大きな戦が起ころうとしている時。
人を疑ってかからなければ、最低寝首を掻かれる。




「まったくもう、海賊さんは相変わらず千祥さんを兄離れさせたくないみたいですね」

「私自身もできそうにないけど……」


結局戦うことを選んだこの身はお家安泰を願う。
そのために、兄から離れることはないだろう。
そう考えるのと同時に、本当にお家をこの戦で守ることができるのか、私が西軍が真っ当であるかを見極めなければならない責任を思い知らされた。



「千祥さん?」

「ん?」

「何だか元気がないように見えますが、大丈夫ですか?」

「え、あ…うん、元気だよ」




思い知らされた責任に、とてつもなく先の不安を感じるばかりだった。






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書く前に前の話を読み直したりするんですが、自分でも展開早いなとか無理やりだなとか、笑いがこみあげてくることがあります笑




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