09.大坂の嵐

「大谷さん、お待たせしまし―……………」


鶴姫ちゃんと部屋を出てから、戻ってきた私たち。
部屋に目をやるなり、一番会いたくなかった人がいる。


『げっ、毛利さん』

「『げっ』とは何ぞ」


やっぱり声を揃えてしまう。
冷徹無情のこの人とはどうしても性格が合わないのだ。
私はまだ瀬戸内で会ったぐらいだし、会話自体もまともにしたことないけれど。


「だって、いつも毛利さんは私の海で―」

「何か文句でもあるのか?」

「むうっ…」


さすがに、きっと睨まれれば鶴姫ちゃんでも黙ってしまう。
何だかんだ文句あっても、怖いもん。


「それで、どうして毛利さんがここにいるのです?」

「貴様…長曾我部の末娘か」

「え、ええ、そうですが」


睨まれたというか、元から目付きが悪い方なのだろう。
普通に怖い。


「…我は大谷に呼ばれただけだ。用事は何ぞ」

「いやァ、せっかくの瀬戸内の縁よ。何もせずにはいられまい」

「余計なことを」


毛利さんはため息をもらすけど、これは3人同じ気持ち。


「長曾我部妹…覚えておけ。毛利と長曾我部が組むのはこれで最後よ。
 故に馴れ合うつもりは毛頭ない」

「…勿論です。それは既に兄も承知のことでしょう。
 女とて見てのお言葉でしょうか、これまでの年月があるというのに心外ですね」

「フン、わかっておるならよいわ」


言い返されないのが意外だけど、怒らなくてよかった。
少し皮肉混じりの言葉。
後から心臓に悪さが来てる。


「これだけの用であれば、我は戻るぞ」

「やれ、わかった」


本当に大谷さんは私たちへの嫌がらせのためだけに毛利さんを呼んだんだろうか。
もしそうなら恐ろしい人だ。
怖くて本当のことを聞けなかった。


「大谷さん!私たちのことを知っていながら毛利さんを呼んだんですか?」

「そういうわけではない。ただ、ほんの少しの心遣いよ」


鶴姫ちゃんはさらっと聞かなかったことを聞いたんだけど。
大谷さんも大谷さんで、さらっと嘘ついた。絶対嘘だ。


「もういいですって…ね、鶴姫ちゃん?」

「いえ、私は怒っていますよ!!」

「え?」

「私の機嫌を取りたいのであれば、私と千祥さんをしばらくここに置いてください!!」

「え?」


鶴姫ちゃんが怒ってるのは確かかもしれないけれど、全力で怒ってるわけではないだろううから、冷静さは残ってるはずだ。
出てきた言葉に思わず二度も聞き返してしまったけど。


「…ヤレ、困った。だが、巫を西軍に置けぬことは痛い。
 聞き入れよう、ぬしの願い」

「感謝いたみいります☆
 これで、千祥さんに戦の話も聞けますね」

「ああ、そういうことか。
 突然のことなんですが、お世話になります。ごめんなさい」


鶴姫ちゃんの言葉の意味を理解してから、改めて大谷さんに謝罪する。
あまり気にしてはいないようなので、それが救いだとホッとする。


こうして、兄貴と離れての生活が始まろうとしていた。



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話が無理やり?それが私クオリティですよ!!!
いや、本当衝動で書いちゃうのが悩みどころです(´・ω・`)




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