08.外れた目先
「ぬしも入れば、毛利も喜ぶであろう」
『毛利、さん…?』
それは二人で絶句した瞬間だった。
毛利さんは鶴姫ちゃんのいるところでも睨みは聞かせているし、ずっと兄貴とも争ってきた人だ。
苦手じゃない方がおかしいだろう。
『毛利さんここにいるんですか!?』
つい間を空けながらも、言葉が被る。
そんな私たちに大谷さんは笑いながら頷く。
「今三成と長曾我部のもとにおるわ」
「なんとこの大坂に…」
もしも出会い頭に会ってしまったらどうしよう、まさにそんな顔だ。
「あわわ、じゃあ私たちがこの先毛利さんに会わないか見てみます…なゆたなり あそぎなり以下省略☆」
「う、うん…ん?」
そんな適当でいいのかと素朴な疑問を持ちながらも、ちゃんと何か見えたらしい。
終わった後重々しい空気を纏っているんだけど。
「私どうやら慌てちゃってもっと先の未来を見てしまったようなんです…」
「…毛利と会っておったのか」
「えっと、えー」
「大谷さん、すいません。しばし鶴姫ちゃんお借りしますね」
同盟の話は済んだもの、まだまだ話はあるだろう。
そんな中鶴姫ちゃんを外に出すのは抵抗はあるけれど、嫌な予感がした。
「ごめんね、連れ出しちゃって」
「いえいえっ、千祥さんが連れ出してくれて助かりました!本当にありがとうございます!」
元気に見えるように振舞ってるんだろうけど、どこか悲しそう。
「いつのことを見たの?」
「…この戦が終わってからのことです。勝敗はわかりませんが」
「聞いてもいい?」
「何故か戦に関わったたくさんの人が泣いていました」
結局あの後、部屋から離れたところに出た。
戦にあるのは華々しさだけでない。
親、兄弟が死ねば、大きな悲しみと不安が未来に付き添う。涙だけではすまない。
「怖いなら、出ない方がいいと思うよ」
言えることはそれ以外に浮かばなかった。
『大丈夫』なんて軽々しく言えない。
この言葉はよっぽど自信がある時か、よっぽど自身がない時の極端の二択だけで出るものだと思ってる。
「千祥さんは?出るんですか?」
「私は出るよ。長曾我部のために…言ってみれば出たくない気持ちもあるけど、それは命欲しさとかじゃないの」
「でも、お願いですから無茶しないでください!!
私は怖いんじゃないんです…決めました、千祥さんと出ます」
一瞬耳を疑った。
けれど、本人の目を見れば確かなことだということだ。
「私が千祥さんを守ってみせます」
「何言ってるの、私が鶴姫ちゃんを守るよ。……そろそろ戻ろうか?」
「はいっ!」
先程と比べて、顔が清々しい。
きっと最後まで一緒に戦えるんだろう。
「戦が終わって、みんなで笑おうね」
何があろうとその時まで長曾我部のためになることができたのなら、私には何の悔いもない。
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フラグが立ちました笑
次回毛利さんが出てくるかもしれませんね!!
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