15.空からの朗報

毛利・豊臣の連合軍全体が四国の土地から去ってしばらくが経つ。
段々と前の雰囲気が戻った気がする。

国の主としての仕事も親貞さんが行って、侍女の仕事はいつも通り。
安芸に飛ばされた富嶽の技術者たちがいない風景も慣れた気がする。


何というんだろう、寂しさに慣れた…というか。



だけど、皆絶対に帰ってくるって信じてる。

寂しいけど、希望があるというか。



「だから、私も今日も頑張れるから…」


空気を入れ替えようと戸を勢いよく開けると、額に大きな衝撃が走った。


「っ…いった…え!?」


何にぶつかったんだろうとよく見てみれば、バンダナを巻いた鳥…。
わからないわけがない。いつも元親さんの肩に乗ってた子だ。


「よかった…生き、残ってたんだ……うわああ、良かった!!」


勢いよく抱きしめると苦しそうに無理やり私の腕の中をすり抜けた。
良かった。本当に良かった。


「…もしかして、皆無事?」


久々の城だからか、嬉しそうに飛び回る鳥さんに恐る恐る聞いてみれば、目の前で大きく羽を広げて片足を私の目の前で上げた。


「これは…手紙、元親さんの字っ!」
「モトチカ!カエル!スグニカエル!」
「え、本当―」


驚いているのも束の間でまた空高く飛んでいってしまった。
元親さんのところに戻るのだろうか。


「鳥さん、ありがとう!!無事に帰ってきてね!!」


飛んでいく後ろ姿に手を大きく振るものの、一度も振り返ることはなかった。
だけど、すぐにまた元気な姿も見せてくれる。元親さんも帰ってくる。


「早く渡さないとっ!」


握り締めた手紙を親貞さんに届けないといけない、そう思い城内を全力で駆けることになるのだった。









城内に歓声があがるのは時間の問題だった。
親貞さんに手紙を届けると全員を呼ぶように言われ、大広間に城内にいる家臣団や長曾我部軍の中でも土佐にとどまることの出来た人たちが集まると親貞さんが手紙を読み上げた。


「兄貴は早ければ今日にでも帰ってくるだろう。どうやら名前の話によると兄貴、鳥を飛ばしてきたようじゃないか。すぐ近くの海にいるんだろう。
 宴の用意もせねばな」

『アニキが!!アニキが帰ってくるぜ!!!!』
『やっと元親様が…!!』


元親さんが帰ってくるんだ!!


「私らは今からはちんたらしていられないよ!!急いで宴の用意をするよ!!」
『はい!!』


侍女頭の一言で侍女に持ち場に戻るように言われ、こりゃ大変だと言いながら皆笑顔なのだった。
この中には旦那さんが元親さんと一緒に帰らなかったという人もいる。見ていれば嬉しさがこちらにもひしひしと伝わってくる。


「元親さん…」


もうすぐで会える。嬉しいけど、私自身の気持ちの整理はつけられなくて少しだけ焦る気分になったのだった。





  


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