11.無力惨敗

いつもとはどこか雰囲気が違う。

天正十三年、六月。
とうとう元親さんが城を出た。


『ご武運を』


結局同じ言葉しか言えなくて、元親さんが出て行った今になって後悔が襲ってくる。
無事に戻ってくる、その約束に縋るしかなくて何もできなかった自分を責めずにはいられなかった。







元親さんが城を出て、一月ほど。
八月になって蒸し暑さを感じる折、とうとう長曾我部が敗れてしまったということを聞いた。
そして、元親さんがどこにいるかわからないということも。



『岡豊に毛利元就がくる…それまでにアニキが見つからないと土佐は………』



嫌なことばかりが耳に入る。
豊臣に敗れたこと。元親さんが帰ってこないこと。毛利の人がここに来ること。
これだけ悪条件が重なれば仕方ないことだろう。


「元親さん…」


自分に何か力があれば良かったのに。
何かできることが少しでもあれば…。


『名前はここの人間だ、長曾我部の人間だ』


そう言ってくれたのに。
悔しい…悔しい、悔しい。
元親さんが私を長曾我部の人間だと言ってくれたのに、私は何も長曾我部のためにできないんだ。現実を前に、崩れ落ちてしまう。



ああ、元親さん…。
私にもできることをください。あなたのためにできることを…。

涙で目の前が曇るだけの自分に、悔しさと情けなさしか残らなかった。




  


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