09
「おかえり〜…って、どしたのその顔」
「ただいま。いろいろあってな」
名前と付き合ってその日。
ずっと名前の言葉のひとつひとつを考えていた。
『本当に私のこと好き?』
そんなこと告白した相手に聞くもんなのか。好きだと思うから告白するもんだろうに。
『私を誰とも重ねない?』
俺が誰かを思っているように見えるのか。それとも名前は夢の中に名前に何か関係があるのか。
『膝枕しても他の女の子の名前呼ばない?』
普通そんなことをする奴は滅多にいないだろう。した奴は夢の中の俺しか知らない。
それをピンポイントで。俺に。
姉ちゃんの声も右から左へ聞き流す状態。
「名前ちゃんと何かあった?」
ただ、『名前』の言葉で意識がはっきりとする。
その俺に俺自身笑いたくなるし、実際姉ちゃんは笑っている。
「…今日告白して付き合った」
「ほー。姉ちゃん嬉しいわ。というか、告白した身なのになんでそんな暗い顔してんの?」
「俺あいと席も隣だし学校じゃ一番知ってるんじゃないかってほどいろんな話もしてきた。だがよ、鶴の字とか元就が知ってることを俺全然知らねえんだ。
全然あいつのこと知らなかったんだ」
これから付き合って知っていくもんだから。それでいいと思ってた。
それでも俺の中ではどうも知らないことにいらいらする。
「でも好きっていう気持ちがあるんでしょ?」
「そりゃ勿論」
「名前ちゃんは今の自分を好きになってもらうって言ってたから結果オーライだと思う、だから名前ちゃんを幸せにしてあげな。そしたら何も問題ないじゃない。
まあもしちかの方から別れるなんて言い出すなら親貞と一緒にちかを殴るけどね」
姉ちゃんなりの慰めなんだろう、最後のはちっと鳥肌たったけど。
問題ないと言われれば何故かすごく落ち着いた。
そうだ、さっき決めたとおりだ。名前を幸せにすればいい。
だが、何度も耳に届く『今の』という言葉。
胸にひっかかった。
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次回元親がきっとやらかします
付き合いましたしデートでもと…
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