06

「…さま、元親様」


ふと声が聞こえ目を覚ますと目の前に名前の姿。
だけど寝る前に見た姉ちゃんの寝巻きの姿とは違い、白い小袖を着ている。


「名前…だよな?」
「名前でございます…申し訳ございませぬ、起こしてしまいまして。でも少し寂しくて」


そう言うと俺の首に腕を回してぎゅっと抱きついた。
よく考えれば俺は布団に寝ていて、目を覚ましたばかりなら勿論布団の中ということで。



「ちょっ、駄目だって、待てっ」
「私じゃお嫌でございますか…?」


赤く染まった頬に、上目遣い。
そこまでされたら反則だと思っちまう。だが、俺が思うのはそれ以上に今目の前にいる名前が夢で見る名前じゃないかということだ。


「夢なのか?」
「夢?」
「いや、なんでもねえ」


きっと夢なんだろう。


「お前さんを愛してる、なのに起きちまえば名前がいて…どうなってるんだろうな」
「元親様…小少将様以外にも女性を」
「いや、お前さんだけでいい。名前以外女なんていらねえよ」


小少将…確かそんな名の側室を夢の中の俺はとってたんだっけ。その後、名前に膝枕してもらった時そいつの名前呼んじまって怒られたんだったけか。                                             
だけど今二人共いない状態で冷静に考えてみれば、本当に愛しく思ってしまうのは名前で。素直な気持ちを言って口付けを落とせば名前が泣きそうな顔をした。


「おいおい、何で泣きそうなんだよ?」
「だって、嬉しくって…元親様……私は元親様のことを愛しております、たとえ何度生まれ変わったって…何度でも元親様に、恋に落ちます」


込められた腕の力が強くなり、鼻をすする音が聴こえた。
どうしてなんだろう。
どうしてこいつはここまで俺のことを。



…あれ、こんなことあったような。


『ごめんね、元親くん。嬉しくて泣いちゃった』


「名前…?」
「はい、元親様」


顎を取り、己の方を向かせれば濡れた瞳に俺が映る。
名前も、夢の中の名前も…本当、そっくりだ。



「俺もきっと過去があろうがなかろうが…好きになるんだろうな…」
「あ、ありがとうございますっ」



泣きながら笑う名前が綺麗で、可愛くて。
首に回された腕を解き、そっと押し倒した。


「名前」
「元親、様っ」
「…んな可愛い反応されたら止まんなくなるじゃねえか」
「っふ、んぅ…」


今度はじっくりと唇を味わい、首に舌を這わせそこを強く吸った。すると、くぐもった声が聴こえる。


「だ、め…もとちかさま」
「何が駄目だ、抱きついてきたのは名前からだろ」
「でも」
「義姉上、残念ながらタイムアウトです」


…親貞!?

その声が聞こえたと思った瞬間に頭に強い衝撃が走り、俺は再び眠りにつくことになった。





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本当に親貞が報われなさすぎて。
親貞は中学生ですね、元親たちが高校生の設定なので。ちなみにお姉ちゃんが大学生です。




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