05
長曾我部にばれてはしまったけれど、黙っていてくれてるので私はなんとか高2の春はなんとか無事に過ごすことができた。
今私が校則破って仕事してるのを知っているのは、幼馴染の慶次と長曾我部しかいない。
まああの二人なら黙ってくれるだろうと信じてる訳だけど、油断しちゃいけないなということを学んだ。
そして、迎えた夏。
一人手帳を開いてみると6月のページになっている。
夏が来た。
夏が来たけど、いろんな意味で高2の夏は危なくなっていた。
夏に入るともちろん、テストがあるわけだ。
あの期末テストという名の敵が。
それに加えて、夏のスペシャル企画・・・。
編集さん鬼か、いや、企画の担当さんだな鬼は。
ただでさえ、現代文、日本史以外は死んでるのに。
死亡フラグが立派に立ってる。
日本史はゲームでなんとかするとして、国語科は勉強してなくても欠点は免れられる。
でも問題は残りだ・・・。
幸いにも嫌いな物理とは去年お別れしたけれど、だからと言ってあの数学2人組からは逃げられない。
私きっと前世で数字に何かを取られたんだよ、うん、きっとそうだ!
あとアルファベットにも何かされた!
なんて考えても、前世の事なんかわかる訳がないので置いておく。
「それにしても同時並行はなあ・・・きついなー」
テストが一週間後、締め切りが二週間後。
次の号はまあ夏のスペシャル企画とか言ってるから需要があるんだろうね。
リア充がはじけるんだろうね。
夏だもんね・・・うん。
「リア充爆発しろ!」
つい叫んでしまうと教室に誰かいたのか、ガタッと物音がした。
教室に残ってるの一人だと思ってたのに・・・。
誰だ、気づかれないほど空気みたいな奴は。
振り返って見れば、そりゃあ空気とはかけ離れている奴で。
こいつを空気と言ってしまえば、海に捨てられてしまうそうな奴だった。
「長曾我部・・・なんかいきなり驚かしてしまったみたいでごめん」
「い、いや、寝てたからいいけどよ。
お前さんリア充とかじゃなかったのか・・・あんなの書いておいて」
「あんなの・・・。
ああ、あれか。そうだね、彼氏ならいない。好きな奴はいるけどな・・・はあ」
「大変そうだな。
っていうか好きな奴いたんだな」
「まあね、私には今あの人がいるだけで十分だよ」
「そんなにいい奴なのか、どんな奴だ?」
まあいるっちゃいるけど。
相手はゲームの中のキャラクター。
「外見の特徴言ってみれば、銀髪で左目に眼帯して、うーんと、筋肉がすごくてたくましい体してる。
それで性格も良くて、アニキって言われてたっけ・・・本当に尊敬するぐらい」
「なあそれって・・・」
「もしかしてわかっちゃった?」
何故か長曾我部の方が凄い顔を赤くしてるんだけど、意外に恋はしてきても恋の話には免疫ないのか。
「わかるなんて凄いね、長曾我部」
「いや、だってよ」
「そうだよ、私の嫁は第二王子のアレートだよ」
「・・・・・・は?」
「うん、アレート可愛いし言うことない」
「・・・・・・・・・・・・・・・・そうか」
「いきなり変な顔してどうしたのさ?」
顔を覗いてみるけど未だにまだちょっと赤いし。
まだめちゃくちゃ暑い時期って訳でもないし。
「風邪か?」
「違えよ!」
「感情表現激しいって、まあいいことだろうけど」
「それで、好きな奴ってのは嫁以外にいないのかよ?」
「・・・・・・嫁以外にだと?
はっはっはっはははは・・・それは私の地雷だぞ」
もうマシンガンのようにアレートの魅力を語ってやろうかと思った。
しかし、それを止めたのは私の理性。
「私そんなことしてる場合じゃなかった!
留年かかってんだ!」
去年の理系は全て30点ちょい。
赤点ギリギリだった。
だから長曾我部に構ってる暇なんてなくて、勉強しなくちゃいけない。
「そんなに危ねえのか?」
「ふん、私の理系のできなさすごいよ?
今年学年上がれた中では理系はだいぶ底辺さ」
いや、まあ胸を張れることではないけど。
なんかもうここで言い切ったら清々しいなと自分でも思う。
「だから勉強しないといけないし・・・締切だってあるしさ。
効率良くできる塾とか行けるんだったらいいけど、生憎行ってないしさ。
周り教えてくれる人なんていないしさ」
慶次は私と同じぐらい理系科目はできないし。
・・・雑賀先生いるから、物理はできるようになったみたいだけど。
他は、かすがさんはぶっちゃけ文系だろうが、文系は勉強することもないしな。
なんとか理系をなんとかしないと。
悩んだって意味がないので結局私には手を動かすしか方法が残っていないのだった。
(※アレートはお気づきかもしれませんが確実にモデルがいます)
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