04
放課後、なんとかふらふらしていた慶次を見つけ出した。
「慶次!」
「元親じゃないか、どうした?」
「わんわー・・・斎藤に用事があるんだが」
「今わんわんって言いそうになったけど、まあいいか。
・・・今日元親あの子を泣かせたそうじゃないか」
「な、何で知ってやがる」
「俺の情報網を舐めてもらっちゃ困るなあ」
ばれているなら言い訳も無駄だということぐらいはわかってる。
しっかし、慶次が凄え笑顔が怖いんだが。
「なあ慶次、怒ってるのか?」
「うん?怒ってるよ」
「悪い」
「俺に謝らないといけないことでもしたの?」
「いや、そういう訳じゃねえが・・・。
とにかく俺アイツの所に行きてえんだよ!!」
「わかってるさ、俺だってちゃんと謝らないと元親をどうしてしまうかわからない」
「お、おう・・・」
慶次にとっては斎藤は幼馴染以上の存在なのか、ずいぶんと苛立っているようだった。
それにしても普段滅多に怒らねえやつが怒るとおっかねえな。
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「名前−、慶次だよ。
プリント持って来た」
『え、慶次?
ありがと、まあ開いてるから入って』
インターホン越しだから俺の存在に気付いていないからだったのか、いつも通りみたいだった。
こっからまた泣かれたらどうしようか・・・わんわんがあんだけ学校で泣くとこなんか見たことなかったからなあ。
家の中に入っても出迎えは一切なかった。
奥の電気がついているから奥にいるんだろう。
それだけ慶次との仲が深いってことなんだろうが・・・無防備すぎねえか・・・・・・。
「よお、名前」
「おう、慶次・・・長曾我部!?なんで、ここに」
「邪魔してるぜ・・・」
予想通りの驚いたような反応だった。
仕方ないとは思うが、微妙に泣きそうなんだが・・・。
それでも人前で泣くのは気が引けるのか、堪えている。
「それで、どうしたの長曾我部は?」
「ああ、昼間悪かった。
後からなんとなく理解できたんだが、俺口外するつもりなんざねえし・・・」
「やっぱりわかっちゃうよな、うん・・・。
私は別に気にしてないから、それにしてもこっちもごめん、いきなりペン投げつけて・・・痛かったよね」
「いや、俺も泣かせちまったし」
「泣いてなどいない!!」
「いやいや泣いて」
「泣いてないよ!!」
「・・・それで名前は元親を許すの?」
煮え切らない俺たちを横に慶次が呆れたように笑いながら、結論を持って来た。
そんな慶次を見て、斎藤は笑った。
「私が言うことでもないと思うけどね、許すに決まってるよ」
右手が差し出されたのでこちらからも右手を差し出して握手をした。
こんな幼稚な仲直りなんかは久々だったが、やっぱりこいつは笑った顔が犬みてえだなと思った俺だった。
「学校に言わないでくれてありがとう、感謝してる」
・・・やっぱり犬だ。
そんなことを思ってると、慶次に軽く頭を叩かれた。
『今度泣かせたら本気で許さないよ』
『大変だな、あんな幼馴染持つと』
斎藤の笑顔を横に、慶次の前ではこいつをわんわんと呼ぶことはもうやめようということを心に誓った。
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