03
斎藤名前。
クラスが一緒になったのは今回が初めてで、よく話したことのない奴だった。
そうは言っても俺は普段からの見なりや態度などからのせいでクラスでも話す奴は限られているうえに少ないが。
斎藤とは一応数回話したことはあるがいい奴だったと思う。
相手が俺でも媚びている訳でもなく、愛想が特別いいわけでもないが自然体だった。
まあその代わりと言っては女子には愛想がいいらしくいつも女子の誰かといるのを見かける。
男にとっては気になる対象にはならねえようだが。
だがたまに女子から告白されているんだとか、されていないんだとか・・・。
結果的には全て断っているらしいが。
女子に囲まれている時に見られる人懐っこい笑顔、そのおかげで俺の第一印象犬だったんだけどな。
正直に言うと、あいつの前以外ではあいつをわんわんと呼んでいたりする。
野郎共から斎藤がどんな奴なんだと聞いてみれば、俺は多くの女子を敵にまわしちまったんじゃないのかと。
世間は怖いもんだ。
「んで、わんわんがこのサイン本持ってた訳だが」
一人、一冊の本を見つめてみる。
・・・サイン本数冊、マジックペン、わんわんのあの『ばれた』っていう台詞。
全てを繋がらせるには単純にあいつが作家だって考えるのが普通だよな。
わんわんが泣いたのは作者だってばれかからって訳だとする。
だったら・・・・・・・まさかのわんわんプロの作家かよ。
よく考えてみれば凄い奴じゃねえか。
そういや国語はいっつもいいとか教師に褒められてることも少なくなかったもんな。
そりゃそうか。
それにしても、だ。
この本の帯。
『もう一度落ちたい甘い誘惑』
恋愛小説らしいが、わんわんが誰かと付き合った事もおろか周りに男だって滅多にいないよな・・・?
あ、一人いたか。
前田慶次。
どうやら幼馴染らしくいつも登下校が一緒だ。
この本も返さねえと。
慶次探して、家連れて行ってもらうしかねえよな・・・今のこの状態じゃ。
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