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『必ず幸せにすることを誓おう』
『お侍様・・・』
『お鶴、愛してる』
『・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・』
もう演劇も流し稽古をできるようになったころ。
最後の最後のシーンで長曾我部の台詞がとんだ。
「もう海賊さん何ボーッとしているんですか!?
本番はそこまで近づいているんですよ」
「あ、悪い」
「っ・・・素直に謝るのはらしくなくて気持ち悪いですが、もういいです。
続きから行きますよ」
鶴姫ちゃんがぱんっと長曾我部の頬を軽くたたくと続きのシーンが流れる。
確かに長曾我部休み明けてからボーッとすることが多く見られるようになったのは私だけの気のせいではないと思う。
問題はその原因で。
もしも私だったらと考えただけで胸が痛む。
『お鶴愛してる。
この先どんな苦難があろうともこの体をかけてお鶴を守り続ける。
だからその心くれぬか』
『既に鶴の心はあなたのものです』
長曾我部が鶴姫ちゃんの手を取り、抱きしめて口付けを落とし幕を閉じる係りの人が出てくる。
口付けといっても鶴姫ちゃんが全力で拒んだからふりではあるけれど、二人の演技力が高いためみんなで息を飲んでしまう。
「はい、おっけー。
みんなお疲れ様ー!」
「名前さん、ちょっとお話が」
「え、あ、はい?」
鶴姫ちゃんが衣装も脱がずに私を連れて屋上まで行く。
もうなんだかこの光景が私には慣れてしまったきがする。
「名前さん!海賊さんが恋煩いみたいになってるんですが!」
「へ、長曾我部が?何で?」
「どう考えても名前さんしかいないじゃないですか!
あ、ちなみにどこまでいったんです?」
怒っているわけでもなくすごくはしゃいでいるわけではなく。
どう表現したらいいのかわからないけれどとりあえず鶴姫ちゃんのテンションがすごかった。
「・・・告白はしたよ」
「わあ!おめでとうございます!」
「いやいや、まだ返事もらってないし、私本当に泣きじゃくってかっこわるい告白だったんだよ」
あのあとの長曾我部が優しくて、思い出しただけで胸がきゅうっと苦しくなる。
それにしても、私よく告白なんてできたよね・・・。
「名前さんならきっと大丈夫です。
占ったわけではないのでどこにも確信はありませんが大丈夫な気がするんです」
「・・・鶴姫ちゃん、ありがとね。
その言葉に凄く救われたよ」
「文化祭の本番、海賊さんを見てるのもいいですが私も頑張りますから忘れないでくださいね」
「忘れるわけないよ!!」
「うふふ、ありがとうございます」
そう言ってくるっとまわってお辞儀した鶴姫ちゃんに見とれてしまったのは私の中だけの話。
ああ、文化祭もう直前だ。
今日は仕上げの気持ちとワクワクする気持ちで長曾我部のこと考える余裕はないかななんて思ったくせに。
教室帰り次第、目が合って胸の鼓動が激しくなるのは少し先の話。
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