01

いつものように授業をさぼり、だるい体を動かし誰もいない屋上へ続く階段を上った。
あと少しだ、そう思った時だった。
誰かの歌声が聴こえてきた。
この時間帯音楽はないはずだし、歌は外から聴こえてきている。


「ちっ、先客かよ・・・まあいいか」


普段なら先着がいては気分はそんなにいいものではないが、今日は心地よい歌声のおかげであまり気にはならなかった。


『―うより君の笑顔を守りたい』


俺が屋上へ出たというのに気づいていないのか歌声は未だ続いている。
どこにいるのかと探してみれば、扉から少し離れたところに見知った顔があった。
同じクラスの斎藤だ。
歌いながらせっせとマジックで何かを書いている。

それにしても、真面目そうなこいつがこんな風に授業さぼったりしてるとはな。


「おい、斎藤?」

「ん・・・ちょ、長曾我部っ!?」


斎藤は想像以上に驚いた反応を見せて、持っていたマジックを俺に向かって投げつけてきた。


「いてっ」


ちょうど俺の額にマジックが当たり、小さいながらも衝撃を受けた。


「あ、ごめん・・・」


斎藤は俺の額を撫でながら謝る。
その時だった、床に置いてあった数冊の本を見つけた。


「大丈夫だ、それにしてもお前さんみてえな真面目そうな奴が授業さぼって読書か?」


何を読んでいるのか気になって拾い上げてみるとサインの入った本が数冊。
この色のマジック、さっき斎藤が持ってたのと同じ奴だよな・・・?


「これって」


顔を斎藤の方へ戻した時だった。
斎藤は目に涙を溜めていた。


「・・・られた、見られた・・・ばれた・・・・・・」

「いきなりどうした、おい?」

「私の学園生活終わった・・・」


俺から雑に本を奪い取ってかばんに詰め込み、斎藤は走り出した。
・・・ど、どうしたんだ、あいつ!?
それにしても、まだ一冊こちらに残ってる。
返した方が・・・いいよな、そりゃ。


「おい!斎藤!」

「来るな!こっち来るな、馬鹿!」


急いで追いかけはするが止まる様子はない。
あの泣きようの酷さは一体どういうことだ?
どこに行くのかわからず、ずっと追いかけた結果最終的に教室に着いた。

え、教室?


「先生・・・体調が悪いので・・・・・帰ります、今までお世話になりました」

「おい、待てよ!」

「私に付いてくるな、長曾我部の阿呆!」


目の前でしまった教室のドアに俺は立ち尽くすことしかできなかった。





  


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