17

神輿は終わったみたいなんだけど慶次は例年のごとくなかなか帰ってこない。
私一人ならよく先に帰って、それで慶次が屋台のおじさんたちにもらったものを家で食べたりしているんだけど。
今年は違う、長曾我部がいる。


「どうする?」

「どうするって・・・せっかくだしもうちっと見てから帰んねえか、屋台のもんも向この方にあるのはまだ食べてなかっただろ」

「あ、本当だ!
 まだクレープやらいか焼きやらは食べてない・・・行こっか」


長曾我部が指差した先にまだまだある屋台。
やっぱりテンションが上がってしまう。
何だかお祭りの日って周りがキラキラしているように見える。
夢があって、おもしろさがあって、楽しさがある・・・。


そして次なるものを求めて歩き出した時だった。

「うわっ!」

足を上げた瞬間に下駄の鼻緒が切れて、前に倒れそうになった。

「あぶねっ!」

「っ・・・・・・あ、あれ、長曾我部ありがとう」

ぎゅっと目を閉じても痛みを感じないことを不思議に思い、恐る恐る目を開けてみれば長曾我部の胸板。
こけてしまう前に受け止めてくれていたらしい。


「助かったよ」

「いやいや、怪我がなくて良かったってとこよ。
 でもそれじゃ歩けねえよな・・・」

「切れちゃった・・・ごめん、私帰るわ。
 慶次しばらくしたら戻ってくるだろうし長曾我部は−・・・」

「ちょっと待ってろ!いいな、そこを動くなよ!」


抱きかかえられて道端に置かれると長曾我部はどこかへ走っていってしまった。
待ってろと言われて、まあ動くこともなく待っていたんだけど。





しばらく素直に待っていれば、ちゃんと長曾我部は帰ってきた。
しかもさっき私が欲しいと言っていたクレープ、いか焼き、フランクフルト等の食べ物を持って。


「おかえり」

「お、おう、ただいま・・・って何笑ってやがる」

「え、だって、だってねえ?」


走ってきたのか凄い息切らしている長曾我部。
大人っぽい見た目と持っている食べ物の量のギャップでつい笑いが溢れてしまった。


「でもこんなに食べきれないよ」

「俺も食うから−・・・・・・あれ、雨か?」


長曾我部の言葉を遮るように私たちのあいだに雨が降った。
最初ポツポツと降ってきた雨は強くなっていった。


「ちょ、長曾我部!」

「おう、帰るぞ!これ持っとけ!」


屋台の戦利品を全て私に押し付けられると突如体が浮いた。


「へ、あ、ん!?
 ちょっと重いから!私重いから!」

「重くねえから。
 それに、んな状態で歩けるわけねえだろ、嫌かもしれねえが我慢してろ!」


長曾我部に体を抱えられ、思ってもみない速さで走られ私はただ戦利品を落とさないように持ちながらしがみつくしかなかった。




  


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