16

いきなりわんわんが押し付けたゲームにも勝ったのはいいが、いざ慶次に抱きつけと言ってみれば凄い顔をされた。
まあ勝つ気満々だったぐらいだから仕方ないのかもしれねえけど。
結局はわんわんは慶次の顔見るなりまんざらでもないみたいな顔になったが。
ちなみに慶次は言うまでもなくデレデレしている。
人事ながらやっぱり長年好きな奴にやっと抱きつかれたんだ・・・罰ゲームでも。
そりゃ嬉しいだろう、慶次の顔を見てると俺までもが微笑ましく思ってしまう。


「んで、メインは神輿か?」

「よし、俺乗ってくるよ!!」

「よし、行け慶次!」

「え・・・・・・・・・は?」


わんわんが慶次の背を勢いよく押すなり、慶次は人ごみに紛れて姿を消した。


「おい、いいのか!?」

「うん、だって慶次毎年神輿乗ってるし。
 でも今年は長曾我部がいるおかげで私ひとりじゃないな」

「そうか・・・」


というか、わんわんが今年初めてひとりじゃないってことは、今二人きりの状態なんだが。
慶次良かったのか、今はもう見つけられない慶次に問いてみるが返事が返ってくるはずもなく、二人きりとなった。
どうしようか、これといって話す話題もある訳じゃねえし。
そんな中だった、俺の携帯のバイブが震えた。
見てみれば慶次からでしっかり『わかってるよね?』と来た。
わかってる―てのは、もちろんわんわんのことだろう。


「あ、そういや斎藤。
 別に俺との連絡で慶次通さなくても良かったんだぜ」

「連絡?」

「ああ、いちいち慶次から祭りのことやらいろいろ来たし。
 慶次から俺のアドレスもらってんだろ?」

「アドレス・・・もらってない・・・」


何のことだとわからないというようにわんわんは頭に手を置いて考え出すが。
・・・慶次、あの阿呆が。
どれだけ警戒心強いんだよ。


「あー、もういい。
 ほら携帯出せ!」

「あ、あ、はい」


慌てて携帯を取り出し、俺に手渡しする。
俺は俺でしっかりアドレスだけでなく、電話番号まで丁寧に登録してやった。


「慶次には内緒だ」

あとあと面倒になりそだし。
そんな俺を見て、何故かにやにやと笑うわんわん。


「どうした?」

「いや・・・長曾我部もちゃんと慶次好きだなあって」

「・・・友達としてだが?」

「ふっ」


絶対変に勘違いしてる。
絶対友情の意味だって思ってない。


「・・・・・・・・・」

「いって、痛い、痛いって!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「だから無言で頭ぐりぐりすんなー、って!!」


本当に小さい犬が吠えるように反応する斎藤。
確かにこんな愉快な幼馴染を持ってれば楽しいかもな。

少しだけ慶次の独占欲に納得がいった。






  


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