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そしてとうとう夏休みに入った。
今のところ仕事を順調にこなしていっているのでこれはもう甘いものは余裕でゲットできると頬が緩む。
かすがさんおいしいとこいっぱい知ってるし、楽しみすぎて仕方ない。

祭り行ってりんごあめも、たこ焼きも、はしまきも、いか焼きも、クレープだってある。
夏はもう太っちゃうなーと自嘲すれば思い出したこと。
そういえば、私長曾我部の連絡先知らない・・・。
慶次は携帯にばっちり住所までもが登録されているけれど、長曾我部に至っては名前の文字ですらない。


「慶次!」

「名前!?」


定番の幼馴染のよくある図のように窓を飛び越えて、慶次の部屋のドアを勢いよく開けて飛び込んでみれば、冷たいクーラーの風。


「あー、涼しい」

「いやいや、あのね名前。
 俺が着替えてたらどうすんの・・・名前も女の子なんだからちゃんと恥じらいとか遠慮とかの気持ちを持ちなさい」

「慶次までそう言うこと言っちゃうんだ、私悲しい」

「え、え?」

「はいはい、冗談だよーどうせかすがさんにも言われてんだから慣れてるって。
 それに慶次いい体してんだから何も恥じらう必要は無いよ、むしろ見れたら俺得だし」

「わかったわかった、本当昔から変わんないねー。
 んで、今日はどうしたのさ・・・部屋に飛び込んでくるのは減ったってのに?」


慶次が相変わらずだと笑うので、ちょっとは成長したと言いたいもんだけれど身長意外に言えることがないので黙って正座をして本題に入る。

「いやあ、今回の夏祭りはですね・・・同じクラスの長曾我部元親君と行くことになりました。
 奴はリア充だけどいい奴です」

「まあ元親はいい奴だけど・・・わかったよ、どうせ名前のことだから元親に頼まれたりでもしたんだろ?」

「お、正解!よくわかったね、慶次の頭で」

「ちょっ、俺だって今回は負けたけどいっつも理系科目は名前に勝ってるよ!?」

「はは、冗談だってー。
 それで慶次、彼女作ってないよね?」

「勿論、何たって俺は名前に一途だからねー」

「本当どの口が言うか、この前雑賀先生にマンツーマンで教えてもらってたの見たぞー」


頬を抓ってみれば慶次は痛いと唸った。
なんか本当唸っているところとかも可愛いんだよね、慶次は。
そしていつまで彼女作らないかが不思議なんだよね、慶次は。


「そんなこんなで私に長曾我部の連絡先教えて」

持って来た携帯を見せて、赤外線受信を設定してみて、返って来た慶次の言葉。

「え、やだ」

「はい?」

「やだよ・・・でもその代わり元親にはちゃんと俺が連絡する、だから連絡先はいらないよね」

「まあそれならいいけど。
 どうした、慶次?」


夏祭りの話をした時からどことなく不機嫌そうだと思ったけれど、まさかこんな結果をもたらすなんて思いもしなかった。
だって長年一緒に来たってのに、まさか幼馴染のお願いを一言で投げ捨てるなんて。


「なんか怒ってます?」

「いいや、うん、まあー嫉妬かな?」

「っ!?」


慶次の口から出た嫉妬の言葉。
え。
私が長曾我部の連絡先聞こうとしたから・・・?

もしかして、慶次。


「だから今まで彼女作らなかったの?」

「っ・・・うん」

「そっか、慶次。
 気づいてあげられなくてごめん」

「いや、名前が謝ることじゃないけどさ―」

「私応援するから!
 そうだ、好きな野郎がいるってのに恋人なんざ作れないな!!
 できる限りのことするから、今回もな、ちゃんと思い出作りしよう、な!」

「いや、違うから。
 俺別に元親の事そんな目で見てないって」


幼馴染がいつの間にか女性に興味をあまり持っていないと言うのも何だか寂しいことでもあるけれど、幸せを祈ろう。
幼馴染だもの。





  


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